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イギリス、レディング大学院に留学します

こんにちは、Wolphtypeです。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、この度(ようやく)イギリスはレディングにあるUniversity of Reading, レディング大学 大学院の書体デザインコース(MA Communication Design: Typeface Design Pathway)からUnconditional Offer=無条件合格を頂き、9月の中頃より留学することになりました。今はビザ取得の準備中で、住まいなど様々な手続きに着々と取り掛かっています。

武蔵美に在学していた頃から「留学したい」と言い続け早2年、これまでのこととこれからのことをつらつらと書いていけたらと思います。

なぜ留学するのか

そもそもなぜ留学するのか、一言で言えば「日本で勉強していて市場に出せる品質の欧文書体を作るのは難しいと感じていたから」という理由です。自分が書体デザイナーになることを目指し始めたのは5年前、19歳の時でした。当時高専の4年生だった自分は、書体に興味はあるものの日本人の欧文書体デザイナーは小林章さんしか存じておらず、日本人が欧文書体デザイナーになるのは無理なのではないかと考えていました。しかし、ひょんなことから――確かArialの制作経緯を調べている過程で――大曲都市さんのブログに辿り着き、その時大曲さんと小林さんにメールをさせていただき、書体デザイナーになれる道があることを知ってから、自分は欧文書体デザイナーを志すようになりました。

その後、大曲さんがお薦めしてくださったように武蔵美の視デに編入し、タイポグラフィや他の様々なフィールドに触れ、学びました。白井先生を始めとしてタイポグラフィや書体について学ぶ機会も多くあり、同時に在学中には授業の内外に限らず書体をいくつか制作しましたが、同時に欧文をデザインする上でネイティブではないが故の「自信と確信のなさ」を痛感することも多く、留学をしたいという気持ちは強まるばかりでした。

特に、2019年のATypIでは、Type Critという書体レビューの場に参加しましたが「Diacritics(発音記号)のデザインがないと書体の評価はできない」という意見をいただき、また卒業制作において制作したRoumeにおいてもDiacritics周りのデザインに甘いところがあり、現代の多言語に対応した書体を作る技量と知識を身につけなけねばならないとも感じていました。

在学中のアルバイト及び卒業後働かせていただいていた日本デザインセンター オンスクリーン制作室でも何度か書体を作る機会に恵まれましたが、自分は1から市場に出せるクオリティの「本文用欧文書体」を作るにはまだまだ知識が足りないと感じ(自分が自分のことを「書体デザイナー」と名乗らないようにしているのもそれが理由です)改めて留学を決意しました。

あっちで何するの

MATD(Master Type Design)のコースが1年なので、とりあえず1年間精一杯頑張ってこようと思います。IELTSの試験は通ったとはいえ英語についても課題ではありますが、今は不安よりも楽しみの気持ちが強いです。卒業後もできれば経験を積むため欧州のタイプファウンダリに入れたらいいなあ…と考えていますが、それは卒業した時にならないとなんとも言えないので、できたらいいなあくらいの気持ちです。また、最初は大学の寮に入る予定だったのですが、クラスメイトがハウスシェアの提案をしていたのでそれに乗り、4人でハウスシェアをすることになりそうです。これもまた不安であり楽しみですね。今はひたすら硬水対策と電源プラグについて考えています。

留学までのスケジュールを振り返る

留学の準備は主に2つ、「IELTSスコアの取得」と「大学院自体の合格」です。「両方」やらなくっちゃあならないってのが「日本語話者」のつらいところだなって感じです。自分は最初2021年の9月に留学しようとしていましたが、覚悟が足りてなかったので留学できませんでした。今年は何とか留学できるようになりましたが、正直スケジュールはかなりギリギリなので全く参考にせず、反面教師にしていただいた方が良いでしょう。

まずMATDの求める英語の条件は「IELTS 6.5 overall with no element less than 6.0 (or equivalent).」すなわち総合成績6.5点、加えてリスニング・リーディング・ライティング・スピーキングそれぞれが6.0点以上でなければいけない、もしくはそれと同等の資格(PTEテストやTOEFLですね)です。また、足りてない場合は自分のスコアに対応した期間大学の事前英語コース(Pre-sessional English language programme)に入って試験に合格しても入ることができます。MATD卒の先輩方は条件がもう少し厳しく、OA7.0, それぞれ6.5が条件だったので少し緩くなっているようです。自分は主にEuro Travellerさんの記事を参考に対策をしていました。詳しくは後述します。

大学側の合格に必要なのはPersonal Statement=志望動機、2人からのLetters of Recommendation=推薦書、ポートフォリオ、Work Experience=職務経験、そのほか大学の書類を提出したりオンラインポータルでの情報入力です。こちらに関しては時間はかかりますがそこまでキツイ作業ではありません。手書き嫌い人間としては全部オンラインポータルで済むのはありがたいですね。

2020年

本来のスケジュールとしては、卒業後1年間日本デザインセンターで週4で働きならが英語の勉強をし、2021年の9月に留学をするというものでした。2019年の時点でMATDのGerryさん(教授の一人、入学生の窓口的な先生)にそのプランを話した時には「仕事をするのはマジでやめといた方がいい、絶対英語勉強するのキツイから(意訳)」とアドバイスを受けていたのですが、なんとかなるやろとそうした結果なんとかなりませんでした。社会人1年目というのもあり仕事について行くので精一杯で、労働の後英語を勉強できる気力もなく、結果在職中にした取り組みといえばIELTS対策の本を1冊買った(買っただけ)のとFont Review Journalをたまに訳していたことくらいです。1年がすぎ、流石にこれはまずいと感じた自分は、オンスクリーン制作室を退職させていただき岐阜に帰って真面目に準備をすることにしました。

2021年 準備の一年、停滞の一年

岐阜に帰ってきて1年とちょっと、悠々とデザインをしながら準備をし…たかったのですが、親がどうしても今のうちに陶芸をやってくれということで、4月から2022年の3月まで陶芸をやってました。なんで?陶芸、留学準備、デザインの草鞋で忙殺されており、最初は何もできていませんでしたが、8月ごろになりそろそろ始めないとまずいと決意し、オンライン英会話のCamblyに登録しました。今でも続けており、合計62時間も喋ってるようです。すごい!

最初はあまりに緊張しており、レッスン開始ボタンを押すのに何時間もかけ、当の15分のレッスンでは先生に気を使わせてあまり喋れず、という散々な結果でした。次からはデザインをバックグラウンドに持っている先生を選び、コースを選んで受講し始めました。詳しくは以前の記事でも書いているのでそちらも読んでみてください。
最初は英語に慣れるために普通の中級会話コースを10月末ごろまでやり、12月からIELTSのコースを始めました。

同時に単語帳を一日100単語ずつ見ていくという勉強もはじめ、それもずっと継続していました。昼に100単語、夜に同じ100単語を見直し、500単語見たら最初からやり、それを4周したら次の500単語に行く…という方法です。全ての単語が定着したわけではないですが、かなり効果があったと思います。発音を確認しつつ、例文の英語を隠して文を考えたり音読したりするのもよかったです。1月の末に初めてのIELTSを受けることに決めたので、Euro Travellerさんの練習法を真似てIELTSの過去問のReadingを解き、文節に分解し、わからない単語は調べてリストにし、速読をして読解スピードを高めるという勉強をしていました。WritingはKindleで例題回答文集を買い、それを見ながら時間を気にせず過去問を解き、終わってからGrammerlyとCamblyの先生に文をチェックしてもらう、というのを各テストの前に4–6問程度やっていました。

Listeningは毎日2時間弱運転する時間があったので、行き帰りにCollinsのListening for IELTSという本のCDを流してひたすらシャドーイングしたり、Hapa英会話やBBCの6 minutes vocabulary, 6 minutes grammerを聴いていました。

最初のIELTSの結果はOA6.0, L6.0, R6.0, W6.0, S5.0。結構できたんじゃないか?という手応えはありつつも結果はまあこんな感じだよな、という感触です。しかし、スピーキングを伸ばしつつ他のもちょっと伸ばせばいけるよな〜と楽観的でした。この後1ヶ月ほどやる気が消失してあまり勉強をしていませんでしたが、3月にもう一度IELTSを受けました。

今回は自信がなかったのですが逆にスコアは良く、Listeningが大きく伸びました。Speakingもあと0.5点なので、これは7月にはもう取れるだろうしもう余裕だろ!と調子に乗っていました。

4月と5月は大学の合格を得るために勉強は一旦休み、ポートフォリオや志望動機の作成と推薦書のお願いに集中していました。推薦書は前職でお世話になった師と大学でお世話になった師にお願いしました。原則として推薦書は推薦者が直接提出するため出願者は見てはいけないようなのですが、自分は片方はネイティブチェック、片方は自分で英語に翻訳したため中身を見ていました(こういったことは日本からの留学生は度々あるようです)。志望動機は書き始めれば時間自体はあまりかからないのですが、なかなか気が重く時間がかかってしまいました。ポートフォリオはCamblyの先生から「だいたい20–30ページが普通かな?」と言われていたのですが、大学の条件に「幅広いスキルかつそれぞれの作品のコンセプトやスケッチも載せろ」とのあったので幅広く作っていたら60ページくらいになってしまいました…(もちろん中身は英語)
全体を通して、かなりCamblyの先生にチェックをしてもらったので感謝してもしきれません。こちらは5月8日に出願を終わらせ、その後推薦書を登録していただき、5月30日にConditional Offer=条件付き合格をいただきました。

6月、あとはIELTSのスコアを取るだけです。スマブラのデザインもやりつつ、課題はSpeakingだけなので集中して練習し、6月25日に3回目のIELTSを受けました。
結果はOA6.0, L6.5, R6.5, W6.5, S5.0。正直終わったと思いました。SpeakingのPart2で問題文を誤読してやらかし、そのまま頭真っ白でPart3をやった結果、見事な爆死です。この頃から、「あれ、俺もしかして今年も留学失敗するのか…?」という考えが自分を支配し始めます。仕事やめて岐阜に帰ってきてまで失敗するのはダサすぎるとか、この一年周りのデザイナーの方々は色々やっているのに自分はずっと停滞しているとか、マイナスなことをずっと考えていました。また、7月の初めの西武撃というスマブラの大会にデザイナーとして参加しており、テスト後の一週間そちらにかかりきりで英語の勉強が全然できなかったのも非常に辛かったです。

次の試験は7月9日。自分の弱点はスピーキングであり、特に焦って喋るスピードが速くなる、aやs、the、過去形といったシンプルなミスが多いという欠点を十分に把握していたので、1週間しかない中で、スピーキングを集中して勉強しました。やったこととしては英単語帳を見ながら例文の日本語から英語を予測して喋る、英作文トレーニングの本を見ながらひたすらゆっくりと喋る、など「基礎的なエラーをしないこと」「テンポを落として落ち着いて喋ること」に全力を注ぎました。

結果、要求されたスコアを全て0.5点超えたスコアを取ることができました。SpeakingのPart2では「過去に子供を助けた経験を話してください」という問題で、そんな経験はなかったので捏造して話したりしましたが、全体的に落ち着いて話すことができ、良い結果が取れました。そしてIELTSの書類を大学に提出し、昨日ようやく無条件合格を勝ち取った次第です。

これからMATDに行きたい人へのアドバイス

まず留学に行く前の年の年内にIELTSは終わらせておいた方が良いです。とにかくはやくIELTSを終わらせましょう。精神的にとても焦りますし、遅くなると寮や家選びの選択肢も減っていきます。また、奨学金なども早めに確認しておくと良いでしょう。そして、年明けくらいにゆっくり出願して合格を勝ち取るのが良いと思います。OBの方々に話を伺ったところ、行く前の年の9月にはIELTSのスコアは取得していたとか、年内にUnconditional Offerをもらったとか、そのようなスケジュール感でした。僕のギリギリスケジュールとは大違いです…また、英語のネイティブチェックをしてくれる人を見つけておくのも良いでしょう。英会話の先生にやってもらえるのが一番楽だと思います。同様に、Letters of Recommendationを書いていただく教授や上司には早めに話を通しておくと良いでしょう。

終わりに

苦節ありましたが、なんとか合格をもらうことができました。今はビザの準備と住まいの準備をしていますが、旅立つ前に東京や大阪に行ってお世話になった方々に挨拶をしたいと考えております。また、今後MATD(や、他の大学でも)への留学を志す方がいらっしゃれば、自分でよければ経験やPersonal Statementやポートフォリオを見せたりなどはできますので、お気軽にお声がけください。

とはいえ、これはゴールではなくあくまでスタート。自分自身の人生第2章を英国の地で踏み締めていこうと思います。今後ともWolphTypeと安藤真生をよろしくお願いいたします。