初めまして、もしくはこんにちは、スマブラコミュニティでデザイナーとして活動しているKuroteiと申します。本記事はスマブラ Advent Calendar 2022の12日目の記事です。本来参加は考えていなかったのですが、プレイヤーだけでなくクリエイティブの方々も多く参加されていたので参加してみることにしました。昨日の記事はあんころもちさんのネス窓主として過ごしたスマブラSPです。自分は窓には入ったことがないのですが、中と外、いろいろな事情が見えて面白かったです。なお、本Advent Calendarの中ではタロイモさんの記事の中でも不名誉な登場をしています。よかったらそちらもどうぞ。
私のことを簡単に自己紹介させていただくと、もともとグラフィックデザイナーとしてアニメやゲーム、企業のブランディングといった仕事に携わっており、現在は9月からイギリスに書体(フォント)デザインを勉強しに大学院に留学しています。スマブラのコミュニティではソニック使いのKENさんのファンであり、プレイはそこそこに基本的に観戦勢でしたが、今年の4月よりスコアボード表示ツールのBraceBracketの開発やコミュニティ大会の西武撃のデザイン、仁義の配信アセットのデザインなどを行っています。
そんな感じで色々とやらせていただいていますが、自己紹介を長ったらしくしても仕方ないので気になる方はfun2smashさんが書いてくださった記事を読んでいただけたら幸いです。
さて、私は今年の春ごろからコミュニティで本格的に活動し始めた、というのもありまだまだ経験が浅く、コミュニティの先輩側には恐縮ではありますが、本記事では「スマブラでクリエイティブって聞くけど実際何をしているのか?何ができるのか?」ということを、先週行った西武撃#12での事例や進め方を紹介しながら述べていけたらと考えております。スマブラSPの大会において、クリエイティブという言葉が内包する要素は実に多様です。ちょっと考えてみるだけでも、Twitterのアイコンやヘッダー、startggでのライティング、配信上での配信アセット、会場で撮影する写真、待機中に流す音楽、エンディングに流すモーション、etc…と、あげればキリがないほどできることがあります。そのため、この記事ではこれらの要素を並べ直し、「必要度・効果・大変さ」のパラメータを(僕個人の主観で)つけ、整理してみようと考えています。
そして、この記事はこのような方々に向けて書いていきます。
デメリットのところでも説明しますが、オフ大会のデザインをすることは「仕事」ではありません。すなわち、基本的にお金は発生しません。だからこそ、プロのデザイナーでなくとも気軽に参入が可能ですし、実際大会のクリエイターとして学生さんが参加されているケースはとても多いです。何かをデザインしてみたいけど題材がない、出す場所がないと考えているデザイナー志望の学生さんなどにはとてもいいステップだと思います。
正直なところ現状スマブラの大会に関わるデザイナー、クリエイターは多いとはいえません。しかしだからこそデザイナー同士は割と固まっていますし、独自のコミュニティを持っています。そういった人たち(自分を含め)と繋がりを作れれば、新しいデザインの機会を得たり、インプットを得たり多方面の技術を身につけられるかもしれません。また、お願いすればデザインへのフィードバックやアドバイスもしてくれると思います。僕は頼まれたらやります。
学生のうちに数百人、数千人に自分のデザインを見てもらう機会、というのはなかなかありません。そのため、すでに十分な熱があるコミュニティに自分が関われるのは大きなチャンスですし、承認欲求を満たす的な意味でも最適な場所です。
詳しくは後述しますが、大会のクリエイティブは実に多くの技術が結集されて作られています。グラフィックデザインを中心として、Web, 写真、動画、ライティング、モーショングラフィックス、配信技術などなど実に多様です。自分はグラフィックデザインをメインにやっていますが、スマブラを通して配信や動画のことを学んだり、モーショングラフィックスを少し勉強したりといった機会を持ちましたし、自分が取り組んでこなかった分野に挑戦できる可能性があります。また、名札のデザインや配信画面の構成といった場面では、普段自分だけでは生み出しづらい「イラスト」や「動画」といった要素を扱うことができます。これらは自主制作だけではなかなか触れれない機会だと思います。
これは主催者の方へのメリットですが、大会自体が魅力的になることで「この大会、力入ってるな」と感じ、視聴者数の増加や参加者の増加、スタッフの募集などに繋がるかもしれません。ちゃんと測ったデータではなく肌感ではありますが、実際西武撃はデザインに力を入れるようになってから回を追うごとに反応が良くなっていると感じています。自分はスマブラのクリエイティブは外だけでなく、大会の内側でも良い空気と循環を生み出し、大会がより良くなるサイクルを作ってくれると信じています。
シンプルな話、力が入っている大会は見てて面白いし盛り上がります。視聴者や参加者の方々がクリエイティブに気づく・気づかないにせよ、大会をよりスムーズにしつつ、デザインをする側も、お願いする側も、見る側も三方が楽しいものにできると思います。
ここまで聞くといいことづくめですが、もちろんそんな簡単な話ではありません。公平性を保つためにも赤裸々にデメリットも書いていきます。
残念なことに、どれだけクリエイターが裏で考えようが大会を見ている多くの視聴者はあくまで大会は大会、一つのイベントとしか捉えていません。そのため、ちょっと文字が見づらかったり、ちょっとした誤字、表記ミス、トランジションの切り替えるタイミング…といった些細な原因で厳しいコメントが飛んでくることもあります。もちろんそんなものは次回に向けて取り組むってことで前向きに受け入れるなり無視するなりすればいいのですが、そう入っても人間厳しいことを言われると辛くなっちゃうものです。
大会のデザインって言ってもいうて配信のスコアボードだけでしょ、と思われる方もいるかもしれません。実際スコアボードだけでも配信は完結するものの、やること・やれることは想像以上に多く、結構手を動かすことになります。また、リザルトなどは当日に仕上げることも多く、スピードと正確さどちらも求められるのはなかなか大変です。また、何もかも自由にデザイナーの裁量でできるわけではありません。スケジュールや予算、スタッフの余裕などでできないことも多くありますし、やることが重なると当日のミスも起きかねません。大会は基本続いていくものなので、今回できなくても次回、という我慢も必要です。
大会のクリエイティブシーンで使われるアプリケーションはIllustratorやPhotoshop, After EffectsといったAdobeのアプリが多く、学生割引があっても決して安いものではありません。自分だけならばFigmaなどのツールを使ってお金をかけずに制作することもできるかもしれませんが、他人と協業する場合はツールとそれに伴って購入費がかかる場合があります。
少し厳しい言い方になりますが、人が増えたから単純に作業効率が二倍になるということはありません。経験が浅い人が入った場合、そもそもその大会のデザインを理解してもらったり、作ってもらったものの直しを指示したり、といった時間が発生します。これらは仕方がないことではありますが、新しくコミュニティに入るならば自覚しておくべきことでもあると思います。また、単純に人が増えれば意見が増えますから、やっていく途中でぶつかる可能性もあります。そういったことを考えると、運営側としても新しいスタッフを入れるかどうかは慎重になるべき事項です。
多くの人が気になっているところかもしれません。全てがそうとは言い切れませんが、基本的に日本のスマブラ大会のスタッフはクリエイティブ含め全てボランティアで回っています。(ツールの購入などで経費が出る可能性はありますが。)なので、副業でちょっとスマブラの大会デザインをやってみたい、というのは日本では基本厳しいと思います。正直なところ自分が大会のデザインをしている上で「これ、実際のデザインの仕事に換算したら〇〇万はするよなあ…」と考えちゃうこともありますし、お金に変わるモチベーションがないと続けていくことは難しいと思います。
どのようなモチベーションで大会に参加するのか、どのように保つのかというのは人それぞれです。例えばデザインが上手くなりたい、スマブラコミュニティに貢献したい、配信を盛り上げたい、たくさんの人に自分のデザインを見てもらいたい…などなど、素直な熱意にせよ、承認欲求にせよ、上手くなりたいという学習欲にせよ何かしら自分のモチベーションを自覚しておくといいと思います。
自分の場合、最初はあまりグラフィックデザインが得意ではないからeSportsのデザインをやってみたい、また日本には大会が多いのにあまりクリエイティブに力が入っていないところが多いように見えてもったいない、というモチベーションで入りましたが、最近はいろんな大会でデザイナーが活躍するようになり、今は「次のスマブラコミュニティを担う人たちに自分の持つ技術や経験を伝えていきたい」みたいなモチベーションで動いています(大層な話ですが…)。
では、早速本題に入っていきましょう。クリエイティブの制作カテゴリを簡単に「告知」「配信」「大会会場」に分けて考えてみます。
告知というとTwitterでの宣伝が真っ先に思いつくところではありますが、それ以外にも他の大会の配信に載せてもらうときの画像や、startggに載せるスケジュール、優先枠といった画像それぞれが告知物になり得ます。正直なところ、アイコンやヘッダといったほぼ必須なものを除けば告知はテキストのみだったり、スプレッドシートのスクリーンショットでも良いとも言えますが、こういった細かいもの一つ一つを作ることが大会全体のクオリティにつながります。
言わずもがな、Twitterやstartggにおけるアイコンとヘッダーです。あって当然といった類のものなので、効果を測るのは難しいですが、アイコンを作る際には以下の点に気を付けています。
スマブラの大会のロゴは往々にして複雑になりがちなので、その大会であることを書体や色でわからせることができれば無理にロゴを使う必要はないと思います。一方で、startggの大会がスタックしていく仕様上、また一眼見た時に情報を取得できるように、という意味で大会のナンバリングや日付などは自分はなるべく入れたいと思っています。また、昨今は大会に関する動画も出ることが多いので、ロゴやアイコンをアセットとして公開するのもアリかもしれません。
今回より、startggにて西武撃のロゴ&アイコンアセットを公開しております
— 西武撃 (@Seibugeki_Smash) December 2, 2022
動画等で使用される際は、startgg記載の注意点に従ってご利用くださいhttps://t.co/1PWKHYuad9 pic.twitter.com/T4O5IHaI6S
また、これは大会そもそものネーミングやロゴデザインの話になってくるのですが、「〇〇スマ」「〇〇ブラ」という名前をつけることや、スマブラマークを使うことには慎重になったほうがいいと考えています。スマブラの大会であることが分かりやすくなる一方、このネーミングでは個性が出にくく印象が均質になりがちですし、スマブラマークを使っていればなおさら「地方の一大会」のような印象になりがちです。良い悪いで決められることではないですが、これから大会をどうしていきたいかを考えネーミングやロゴデザインをすると良いと思います。
かなり細かい部分ですし、効果はそこまで感じられるものではありませんが、Twitterやstartggでの言葉遣いも重要な要素です。わかりやすい表記や誤解を招かない表記、また何を言いたいのか分かりやすくするために絵文字をつけるようにする、など様々な工夫が可能です。startggではMarkdownという記法で文章を書くのですが、Markdownのルールを守ってスタイリングをすることで人間・機械共に読みやすい(=アクセシビリティを担保した)文章構造を維持することができます。
これらの画像は文章だけ、もしくはメモ帳やスプレッドシートのスクリーンショットでも情報自体は伝わります。しかし、これらが作り込まれている大会は単純にちゃんとしてんな〜感がありますよね。西武撃#12においては、優先枠をスプレッドシートのスクショで投稿したくなかったので作れるものは全部作りました。
リザルトは、選手にとっても大事ですし観戦者からしても楽しみにしている要素の一つです。キャラ画像と名前が入っているのが標準ですが、さらにいろいろなことを試せます。例えば優勝者及び上位3位まではプレイヤーの写真を入れるとか、公式のキャラ画像ではなくスマブラ内で撮影をして使うなど。様々な柔軟性を持っているので作るのが楽しい部分でもあります。
西武撃#12では、上位3位の写真に加えスマブラ内での撮影を行い、優勝者のみ写真と簡単なグラフィックつけた画像を作成しましたが、優勝の特別感、優勝の瞬間を写すという意味でいい取り組みになったと思います。枠から画像をちょっとはみ出させるといい感じになります。なお、リザルトに写真を切り抜いて入れたいときは背景が切り抜きやすいところで撮ること、可能ならマスクを外すこと、いくつか選べるように何枚か候補を撮っておくことが大事です。
【拡散希望】
— 西武撃 (@Seibugeki_Smash) December 3, 2022
大変お待たせ致しました。
本日行われた西武撃#12のリザルト画像がこちらです。
誤っている部分がある可能性がございますがご了承ください。
皆様、西武撃を盛り上げて頂き、また視聴・応援をして頂きまして誠にありがとうございました。
今後とも西武撃を何卒宜しくお願い致します。 pic.twitter.com/X72q99WStO
「動画」、すなわち動く画のパワーは凄まじいですが、同時に多大な労力と技術を要します。現状、西武撃ではあまりに労力がかかるため動画は作ろうとは考えていませんが、篝火さんや海外の大会のムービーを見るとやはりめちゃくちゃアガります。制作に関しては、多方面の技術を持ったチームでの製作が多いでしょう。ちょっとスキルを考えてみても、グラフィックデザイン、動画編集、モーショングラフィックス、スマブラ内での撮影、ビデオ撮影etcといったスキルが必要です。また、篝火さんなどが作られているDay1の結果に合わせて作っているDay2の動画は完全にとんでもマンパワーと努力によって作られているので真似しないほうがいいです。ヤバすぎ(いい意味で)。
大会はプレイヤーのためのものなのか、視聴者のためのものなのか、色々あると思いますが視聴者からすれば配信に載るものが全てと言っても過言ではありません。もちろんプレイヤーよりは視聴者の方が断然多いので、配信の印象はそのまま大会の印象に繋がると言っていいでしょう。
配信といえばサムネイルは必須ですよね。どのような要素を入れるかは大会によりけりですが、自分は大会名、日付、(可能なら)配信開始時間を入れるようにしています。とはいえ、現場の状況によって配信開始時間は変わることもあるのでそこは注意した方が良いでしょう。自分はサムネイルを作る際、VALORANTの大会(VCT)やApexの大会などを参考にしています。
試合中に最も見る部分がスコアボード、そして配信アセットですよね。スコアボードはStream Control, ストコン、自分の手掛けているBraceBracketなど様々なものがあります。スコアボードを設置するだけならば既存のものを使用するだけで良いですが、もしカスタムがしたいならば、宣伝にはなりますが自分の作っているBraceBracketをお勧めします。画像さえいただければこちらで実装を行いますし、startggと連携した情報入力や、対戦中のスコアボードだけでなくMC、Top8といったレイアウトも実装できます。
とはいえ、スコアボードだけで完結しないことも多々あります。ステージピックの時に選手2人と画面どちらも並べたレイアウトを作ったり、またそれらがOBSやVmixといった配信ソフト上でイメージ通りに配置してもらえるよう伝え方を考えることも重要です。西武撃#12では以下のような指示シートを用いています。
OBSはマウスドラッグで拡大縮小や移動ができますが、ずれることも多いです。大会の配信においては編集>変換を用いて数値で正確に配置することをお勧めします。
選手カメラがなくても会場は成り立ちますが、選手やMCが写っているとeSportsっぽさが増します。普通のWebカメラでも写すことができますが、カメラだけでもやろうと思えばいろいろなところをこだわることができます。また、ポップオフの画面などがあることで、視聴者としても選手のリアルな姿を見ることができます。
Log撮影とは色の編集がしやすい、コントラストが低く階調が広い、加工に適した形式です。多くのミラーレスカメラはこの機能をそろえており、そのLogに大会の雰囲気に合わせたLUT(=フィルターのようなもの)を適用することで、より大会のイメージを押し出した写りにすることができます。西武撃#12にではオリジナルのLUTを作成し、適用してみましたが、まだ写りが甘いところがあったため次はまた調整し直そうと考えています。
トランジションは試合に移る時など、他の画面に移る時に流すモーションを指します。モーションデザイナーの腕の見せ所とも言えますし、多くの大会で力が入っている部分です。西武撃では#11の時に自分が作ったモーションがありましたが、#12ではモーションデザイナーのsugaさんが加入してくださり、〜Top8とTop8以降、そしてMCに移る時の汎用モーションという3種類のトランジションを製作し、大幅にパワーアップしました。基本的には〜3秒、長くても4秒くらいまでに抑えるのが良いでしょう。また、毎回流れるため映像のくどさなどにも気をつける必要があります。一般的にAfter Effectsで使われることが多いですが、自分はCavalryというアプリを使っています。
スマブラSPのコミュニティ大会『西武撃(@Seibugeki_Smash)』のトランジションをKurotei / Wolphtype(@wolphtype)さんディレクションの下、担当させていただきました。
— Tatsuya Suga (@sugamograph) December 4, 2022
西武撃のアイコンでもある弾丸をモチーフに汎用/~TOP8/TOP8~と盛り上がりに合わせた3種類のトランジションを制作しました! pic.twitter.com/NghvVKZNww
トランジションに比べれば必要性は下がりますが、視聴者が待機している時やオープニング、Top8前、エンディングといった映像を作ることもできます。内容を当日に合わせて変えるのは結構大変だと思いますが…また、待機中の画面をモーションにすること自体にはちゃんと意味があります。静止画を流していると配信が止まっているのかも、と勘違いされる可能性がありますが、画面を動かすことで配信が動いているかどうかが分かりやすくなります。
スマブラSPのコミュニティ大会『西武撃(@Seibugeki_Smash)』のエンディングをKurotei / Wolphtype(@wolphtype)さんディレクションの下、担当させていただきました。 pic.twitter.com/746qnRvzHF
— Tatsuya Suga (@sugamograph) December 4, 2022
西武撃#12においては、名札のイラストを名札だけに使うのは勿体無いと思い、また名札のデザインにおいて隠れてしまう部分があったのももったいなかったので、イラストをモーションにも活用させていただきました。結果として評判も良く、良い取り組みだったと思います。
スマブラSPのコミュニティ大会『西武撃(@Seibugeki_Smash)』の待機画面をKurotei / Wolphtype(@wolphtype)さんディレクションの下、制作させていただきました。
— Tatsuya Suga (@sugamograph) December 4, 2022
イラストとデザインのお陰で素敵な待機画面になりました…! pic.twitter.com/oCQLOJHRN0
また、モーションを流す際の音楽選びもクリエイティブの一つと言えます。スマブラの曲の中から選ぶこともできますし、Diverse SystemのStream Palette、Sound Cloudといった配信で流しても良いプラットフォームから選ぶこともできます。日本の大会においては音楽の自作の事例は見たことがありませんが、海外では音楽から作っているところもあるようです。まだまだ開拓の幅がある分野ですね。
配信を見ている視聴者にとってはあまり関わりのないところですが、選手や現地に観戦をしに行く人にとっては大会の体験を決める重要な要素になります。やろうと思えばポスター、リーフレット、垂れ幕など様々なことができますが、印刷には日数がかかりますし実費がかかることも多く、また保管が必要になることもあります。そういった部分は注意が必要です。
オフ大会といえばこれ、名札ですよね。慣習としてどのオフ大会でも作られていることが多いですが、名札を作る上で自分がお勧めしたいのは、1. イラストは背景のない素材としての状態でいただき、名前欄などのデザインをデザイナーで行う、そして2. ある程度の大部数(100–)なら、印刷通販グラフィックなど印刷所に発注することです。
まず1つ目、イラストについて。募集に集ったイラストレーターさんが名札全体のデザインを担当することがままありますが、大会としての統一感を出したり、名前のスペース・見やすさを確保する、他の情報を入れるといった目的がある場合はイラストを背景のない、なるべく分解された素材でいただき、デザイナー側でレイアウトを行なったほうが良い場合があります。イラストレーターさんはイラストを描くプロですが、同様にこちら側はデザインのプロですし、協業によってより良い結果が得られることは往々にあります。西武撃#12ではデータがなるべく分かれたpsdで送っていただいたことで、奥行き感のある名札のデザインができただけでなく、モーションの中でもキャラクターを別々に動かすといったことを試せました。なお、イラストレーターさんにお願いするときは塗り足しまで描いていただくようお願いしましょう。
2つ目の印刷所への発注は、様々なメリットがあります。「いや、名刺用紙買って自分で印刷したほうが早くね?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、1. 名刺用紙を買う 2. 印刷用にレイアウトして印刷する 3. 自分でカットする という作業は結構な手間です。印刷所へ出せばきれいに印刷・カットしてくれるだけでなく、結果として安上がりになることもあります(例えば、印刷通販グラフィックで片面カラーグランヌーボ180kg, 5日納期200枚なら1980円)。また、いろいろな紙を使うことができますし、印刷所に出したほうが色再現性も良く、イラストもカッコよく映ります(西武撃#12ではヴァンヌーボVG スノーホワイト 195kgを使用しました)。
🎫Seibugeki 12 Nameplate
— 西武撃 (@Seibugeki_Smash) December 3, 2022
今週土曜日開催の西武撃12の名札を紹介いたします。 pic.twitter.com/sqcfn5tDv7
また、名札は必ずしもイラストが必須というわけではありませんし、名刺サイズである必要もありません。海外の大会では裏面にステージルールが書いてあったりと、様々な工夫が見られます。従来の慣習に捉われすぎず、いろんなことを試せる可能性を秘めていると思います。西武撃Rising#01の名札はイラストはなく、QRコードでstartggに素早くアクセスできるなどの工夫を行っています。
前回に引き続き西武撃Risingを色々作ってました。新しい企画ということで、西武撃のイメージは引き継ぎつつ自分も前回とはまたちょっとちがった感じで色々作ってました。次回は他のデザイナーさんと一緒にできたらいいな〜 pic.twitter.com/eeBqxI1BwV
— Masaki Ando / Kurotei (@wolphtype) September 26, 2022
基本的に名札は参加者が持ち帰る唯一のものなので、思い出として強く残るよう、力を入れるべき部分だと感じています。名札をTwitterで紹介する際にも、名札の画像をただ貼るよりも実際のシーンを写真に撮ったり、モックを作ってよりカッコよく、イメージできるように見せるのも良いと思います。
これらも正直汎用のものでいいといえばいいのですが、独自のルールを設定していたり、大会の雰囲気を重視したいならばオリジナルで作るのが良いと思います。こういった実用性の強いものを作る際は、見た目のかっこよさよりもフォントサイズ、読みやすさなどを重視しましょう。オフ大会には幅広い実力のプレイヤーが参加するため、もし初めて参加するプレイヤーがいたとしても、ステージ名をちゃんと日本語で表記し読めるようにする、画像を見てちゃんとどのステージかわかるようにする、といった配慮が必要です。
また、こういったものはコンビニや家庭用プリンターで印刷されることも多いため、なるべく背景、塗りの面積が広くないほうが好ましいです。印刷面積が大きすぎると紙がよれよれになることもありますし、何よりインクがもったいないです。背景が紙の端まで広がっていると意図しない白いフチがついてしまうこともあるので、紙面の端に印刷するオブジェクトを置かないことも重要です。
会場の写真をたくさん撮っておく、というのは記録の面でも会場の雰囲気を伝えるという面でも重要です。可能なら写真は当日大会のアカウントで呟いて、会場の雰囲気を伝えることでオンラインの視聴者に一体感を与えることができますし、何より大会の雰囲気に惹かれた次回の大会に参加してくれる参加者や観戦者の増加につながります。
西武撃#12においては、西武撃用の写真の加工プリセットをLightroom Classicで作成・共有し、西武撃のロゴの透かしを入れることでよりオフィシャル感のある見せ方を試みました。Discordで写真を投稿する用のスレッドを作成してツイートする係の人に伝達することでスムーズに運用でき、会場トラブルの都合で枚数は少なかったもののうまく行ったと思います。それにしても、外部から参加してくださり写真をたくさん収めてくださるフォトグラファーの方々には本当にいつも感謝しかありません…
ルーザーズを走り続ける敗者側ミーヤー、対するは勝者側をうめきが向かい打つ。
— 西武撃 (@Seibugeki_Smash) December 3, 2022
西武撃12の決勝が始まります!#ブゲキスマブラ
📺Main: https://t.co/PXsS5KzaHE
📸 @growing_nature pic.twitter.com/Q9IJFnyt5N
大会の規模が大きく、魅力的なものになればグッズを作ったり、MCの裏や写真を撮る時に使う背景紙、垂れ幕やポスターといったアイテムを作るのもいいかもしれません。どれも実素材なのでお金がかかりますし、次回の大会への保管、在庫の管理などもありますが、スタッフとしても選手としてもいい思い出になるはずです。西武撃でもそろそろステッカーとか作ってみたいところです…
「スマブラ大会のクリエイティブが気になる人のために簡単に読めるライトな記事を書こう!」と思っていたのに気が付けばめちゃくちゃ長くなっていました、すみません…まあ、何が言いたいかっていうと「大会の中でいろんなことできるしみんな優しいから気になったら声かけてみてね!」って感じです。最近はコミュニティも盛り上がってきているのを感じますし、繋がろうと思えばてんぷらさんが作成されたDiscordの大会制作勢窓があるので、気になる方は是非入ってみることをお勧めします。自分も最初はここからつながりました。
https://t.co/yaYXz6ovzR
— てんぷら/Tempra (@tempra_chan) March 17, 2022
スマブラの大会制作勢窓を作りました
オフ大会スタッフたちが持っている知見を共有して、交流する場所にしたいと思っています
- 普段考えてる事
- Tips
- 大会観てていいな~と思った事
とかが集まったらうれしいです
スタッフじゃなくてもスマブラ勢以外もウェルカムです
ということでこの記事はここまでです。そして、明日は西武撃#12の名札の1つを描いてくださり自分もいつもイラストを楽しみにしているイラストレーターさんの凛さんです。お楽しみに!
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