こんにちは、Wolphtypeです。いつの間にか11月です。最近、いつの間にかしか言ってない気がします。老いは怖い。10月はめちゃくちゃ忙しかった覚えがあるのですが具体的に何で忙しかったのかは全く覚えていません…
さて、ここ数ヶ月Glyphs関連で色々やっていたのですが、ちょっと落ち着いてきたというか軌道に乗ってきた感じがするので書いてみようと思います。色々悩みもあるんですけどね。
書体・レタリング制作ソフトのGlyphsについて、気軽に質問したり意見を話し合えるDiscordサーバー、“Spur into Glyphs Club” を作ってみました!
— Masaki Ando (@wolphtype) August 5, 2021
Glyphsに興味がある方なら誰でも入れるので、もし入りたい方がいらしたらリプ頂くかwolphtype#2979までフレンド申請していただけたら!(今は10人くらい) pic.twitter.com/t8DIQxn1Tn
Spur into Glyphs Club, 通称Glyphsサーバーです。8月の初め頃に作り、現在2021年11月3日には115名のメンバー(!)がいます。自分がGlyphsを人に勧めまくっている効果があるのかないのかわかりませんが、Glyphsユーザーが増えてきているのを感じる一方で、Glyphsのことを気軽に質問できる場所はないように感じていました。また、自分の大学の後輩も書体を作り始めてくれて、とても嬉しい一方で自分以外の方々からもフィードバックがもらえると良いなと考え、場所を作ってみようと思い立ちました。自分がGlyphsを触り始めた時はもう3年以上前になりますが、その時は大曲さんにおんぶにだっこ状態で、ありがたい一方で申し訳なさもあり、簡単なことから難しいことまで自由に話せる場所にできたらと考えています。
とはいえ簡単にそううまくはいきません。のちに述べるGlyphs自動勉強会の影響でメンバーは増えたものの、Glyphsサーバー自体が活発に動いているかというと実際のところ否だと思います。むしろ、Glyphsのことが自由に聞ける、話し合える場所というよりはGlyphs勉強会のための場所になりつつあります。
なぜこのような形になっているのか。原因を考えてみると、まず1つ思いつくのは「Glyphsのアクティブユーザーの少なさ」が挙げられるでしょう。日本においてGlyphsを毎日使っているユーザーはどれだけいるのでしょうか?おそらく100人、いや、50人もいないかもしれません。かくいう自分も毎日Glyphsを触っているかというとそういうわけではありません。Glyphsユーザーが増えたと言っても、大抵は書体デザインやレタリングに興味のある学生さんや仕事で少し書体を扱ったりロゴを作るグラフィックデザイナー、Webデザイナーの方々が多いでしょう。触る頻度が少なければそれだけ疑問が出てくることも少ないでしょうし、Glyphsの話題だけで盛り上がることが難しいのも納得がいきます。幸い大曲さん、大成さん、石川さん、木龍さんといったプロの書体デザイナーの方々も入ってくださり、大抵の疑問の答えは出る状況ではありますが…また、プロの書体デザイナーの方々はプロとしてGlyphsを扱っている以上質問することがあまりないというのもありそうです。(以前タイポグラフィ、書体という範囲でコミュニティを作ったこともありましたが、その時は信条の違いで若干怪しくなったことがあったのでツールに限定しましたが、難しいものです。)
逆に、プロの方々が入ってくださったことによる遠慮もあるのかもしれません。個人的には、この環境を最大限利用してどんな簡単なことでも質問していただきたいところですが、ぜひGlyphsを使い始めた方々、特に学生の皆さんにはたくさん質問していただきたいなあと思っています。書体の名前の決め方とかでもいいので。
ともかく、現状はどうにかしたいと感じています。今考えていることとしては、簡単なことから聞ける初心者用のチャンネルを作ったり、のちに説明するGlyphs勉強会でのUPMチャレンジをサーバー全体に広げてみる企画、書体レビューなどです。コミュニティのファシリテーション的なところは完全に初心者なので、色々ご意見いただけると&助けていただけると嬉しいです。一方で、現状を認める、このままで良いとする考えもできます。会社などの固定されたコミュニティではなく、オンラインのみでかつツールをメインとしたコミュニティである以上、常に盛り上がるのは難しいでしょう。難しいところです。
少しネガティブな感じになってしまいましたが、プロの方々の専門的な話、Glyphs自動勉強会、自分が主に流している書体関係のニュースなどを拾うだけでもそれなりに有益かと思いますので、入りたい方はこちらからどうぞ!
さて、次はGlyphs自動勉強会についてです。自動勉強会というのはもともとhashrockさんが社内で行っていた勉強会です。簡単に説明すると、1. 参加者は聞きたい/話したいことをScrapboxのキューに書く。 2. その話に興味がある人はその話題に自分のアイコンをつける。 3. 3つアイコンがついた話題ができたら開催。その内容に詳しい人が目次を簡単に書き、当日は目次に沿って話していく。という感じで、詳しくはhashrockさんの記事を見てもらうのがわかりやすいと思います。hashrockさんは複雑GUI自動勉強会を開催されていて、自分も参加できる時に参加しているのですが、自分にはちんぷんかんぷんでありつつも楽しませていただいています。
自分は同じくLookDev自動勉強会を開催されている橋本麦さんのリツイートで自動勉強会を知ったのですが、見た瞬間「これはめちゃくちゃ良くできたシステムだぞ」と感じました。というのも、Glyphsサーバーには「作業通話」および「雑談」のボイスチャンネルがありますが、最初は結構盛り上がったものの、今ではあまり使われていません。というのも「雑談」はなんでも話すことができ、資料を用意する必要がないという点では気軽ですが、わざわざ時間を指定してやるような感じでもなく、人が集まるかどうかは運次第のようなところがあります。TwitterのSpacesも同様ですが、一人で雑談チャンネルにいる、もしくは雑談Spacesを開いているのはちょっと恥ずかしく、勇気のいる行動です。(同様に、2人目として入る人も勇気がいります。3人目以降は比較的楽かと思いますが…)Clubhouseは母数が少なかった上、「そういう使い方」が一般的になっている優れたシステムではありましたが、あくまで音声のみのコミュニケーション、リアクションもあまりできないという強いこだわりのもと作られたこともあってかすぐ廃れてしまいました。 では逆に、「セミナー」という形で開くとどうなるでしょうか。セミナーはあらかじめ参加者の数と時間が確定しており、参加者がいないという状況は回避できますが、資料を作り込む手間は莫大ですし、何より講演者と参加者は対等な関係ではなく、インタラクティブではありません。有志の中で行うにはあまりに善意に頼りすぎた駆動で、長続きさせることは難しいように感じます。
その点自動勉強会はどうでしょうか。参加したい人が3人以上アイコンをつけた話題ができたら開催、というシステム上、参加者がいないという問題は回避でき、時期もある程度勝手に決まります。目次は詳しい人が書くので、主催の手間はかなり抑えられています。そしてDiscordのボイスチャンネルで行うため参加者は全て平等であり、自由に話し合うことができます。同様に聞き専の人たちも、Scrapboxにコメントしていくことで参加をすることが可能です。雑談とセミナーの欠点をなるべくシステムによって解決し、人に頼らない設計は素晴らしいと思います。
Glyph自動勉強会は現在Vol.3まで開催したところで、Vol.1および2は30人以上の方々が参加してくださいました。Vol.3は少し落ち着いて、15人くらいの方々が参加してくださり、落ち着きつつも隔週のいいペースで開催できていると思います。やや話し合いが広がって長引きがちではありますが、毎回アーカイブを録画しており、Glyphsサーバーに入っていればYoutubeのアーカイブも閲覧可能です。アーカイブを見ずともScrapboxにある程度内容は記入してあるので、そこからキャッチアップもできます。また、前述したように大曲さんや大成さんと言った方々が積極的に参加してくださり、かなり知見が集まるイベントになってきていると感じます。
とはいえ、全てがうまくいっているかといえば難しいところも多く、プロの方々が積極的に参加してくださっているのがありがたい一方、話題がプロのあるある話に偏りがち、というのが1つあります。つまり、Glyphsサーバー同様初心者の方々が質問しづらい雰囲気を醸成してしまっているかもしれません。司会の自分が直接「〇〇さんはどうですか?」と話を振ることもありますが、そう言った振り方はあくまで自分の知り合いにしかできないので、それはそれで内輪感が出てしまい、初見さんに質問しづらい空気を作ってしまいます。また、そもそも司会で喋っている自分以外は全員ミュートにしていることが多く、話しかけづらいというのもあります。オンラインで開催しているため、例えば風呂に入りながらだとか、作業しながら聴くことができるという利点がある一方、司会からはどのような状況で聞いているかわからないため話が振りづらいという欠点ともいえます。
また、主催として悩ましいところもあります。本来の自動勉強会では目次はみんなで作っていくものなので、主催の仕事は日程を決め、簡単なファシリテーションを行うことになります。しかし、現状として今は自分が目次をなるべく多く書き切り、告知とYoutube用のサムネイルを用意して(これは趣味みたいなものですが…)、告知、当日の進行、アーカイブの作成とアップロードと何かとやることが多くなってしまっています。
このような現状になってしまっている要因の一つとして、この自動勉強会がオンラインで開催されていることがあります。自動勉強会は素晴らしいシステムである一方で、社内勉強会などのオフラインに向きのように思います(実際、同じようなことをNotionでやっている事例もありました)。
オンラインでは参加者のやる気が分かりづらく、その結果目次作りをお願いしたり司会をお願いしづらいように感じます。参加者がそもそもいるのか、参加者がどのように聞いているのかもわからないため、毎回自動勉強会を開くたびに不安を感じています。その結果、空回りしてしまい自ら仕事を増やしてしまうという現状を作ってしまっているように思います。
また、そもそもデザインの界隈にDiscord, Scrapboxがあまり浸透していないのもあるかもしれません。それらを覚えるコストも考えると参加者からのハードルが高いのかも、とも感じます。
現状これらの改善策として、最初に視界を回していこうかと考えています。Vol.3にて参加者の方から提案してくださり、Vol.5から始めようかと思っています。また、同じく目次も書き込みすぎず、参加者の方々に書き込みをお願いしていくようにしていく予定です。(つまり、参加者を頑張って信じようという感じです。)
また、Vol.3からアイスブレイクがわりにUPMチャレンジというものも始めました。これは後述するTypeCookerおよびTypeCooker JPに出されたお題を250UPMなどの低いUPMで文字を作ってみるチャレンジで、Glyphsを始めたばかりの人々と会話の接点を作っていけたらと考えています。
最後に、TypeCooker JPです。これはTypeCookerというサービスの非公式日本語版で、書体やレタリング(作字)といった作品を作る際のお題(条件)をランダム生成するサービスです。「デザインワークにすぐ役立つ 欧文書体のルール」の中のJean François Porchezの言葉に、「機能目的や与件のない書体のデザインはとても困難だ。形の快楽だけのための造形は、私にはできない。むしろ逆に、機能目的や与件に触発されて新しい形の探求がはじまる」という言葉が載っているように、書体デザインは与件や目的があった方がやりやすいものです。自分の体験と重ね合わせても、特に初心者において一つの書体を作り込むよりは多くの種類の書体をたくさん作った方が上達は早いように感じます。しかし、書体を作るにしても毎回テーマを考えるのは難しいでしょう。そこでこのサービスは、形や目的などの与件を与えることで、書体デザインやレタリング(作字)の上達をよりスムーズにしてくれます。制作の際にはスクリーンショットを撮って、GlyphsのImage Frameというプラグインなどに配置するとより良いでしょう。
初級・中級・上級の難易度があり、難易度が上がるにつれて指定される項目が多くなっていきます(難易度が低い方が、自由度が高い)。もちろん条件の組み合わせによっては「こんなん作れるわけねーだろ!」という組み合わせ(例えば、小説用なのに横線なしとか、コンプレスとか)が表示されることもありますが、タブをクリックすれば再度ランダムで生成するため、新しい組み合わせるのもよし、あえて無理な条件に挑戦してみるのもまた良いでしょう。レタリング(作字)向けの難易度も用意しようと考えていますが、自分に知見がなさすぎてまだ作れていません。助けてください。
中身はなんのことはないひたすら配列にパラメータを入れ、それをランダムで表示させているだけですが、いずれはギャラリー機能なども用意できたらと思っています。パラメータは大成パイセンに主に協力していただきつつ、Glyphsサーバーの方にもFBをいただき、作り上げていきました。まだまだ改善すべきところはたくさんあると思うので、是非是非ご意見・ご感想をいただけると幸いです。また、作品を作ったら是非#typecooker_jpでつぶやいていただけると嬉しいです。
こんな感じで、近頃Glyphs関連で行っている活動でした。こういった場所作り、ツール作りはずっとやりたいと思っていて、ようやく行動に移すことができてよかったです。何かと素人なので、拙いところや改善すべきところはたくさんあるかとは思いますが、周りの人々に助けていただきながらなんとかやれています。頂きながらなんとかやれています。こう言った場所作り、ツール作りは続けていきながら、書体制作もどんどんやっていきたいです。それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
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