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2025年の帰省を振り返る

現在、東京・羽田からフランス・パリへの飛行機。到着まで残り1時間半といったところ。今回は、1月23日から2月18日にかけての日本帰省を振り返っていこうと思う。年始の記事でブログをたくさん書くという目標を掲げたし、細かく書いていかないと年末の振り返り記事がとんでもない長さになってしまうし。
イギリス前後は今後がどうなっていくのかわからなかったのもあって、出発とか帰国一回一回が大行事のような感覚だったが、会社員になった今、帰省は年一の定期イベントみたいな感じである。おそらく今後も、年に一回1ヶ月弱ほど帰省すると思う。

特に今回は大量に人に会う約束をして、計画を練り、そしてその一部は体調不良や諸々の都合で崩壊した。カレンダーを見ながら振り返ると、10人以上で集まる会が2回ほどあったのもあり述べ50人以上と約束を立てていて、まーよくやったなと思う。大規模な会以外はだいたいお土産を用意していたが、この人数を頭の中で把握するのは難しく最終的にスプレッドシートでお土産を管理していた。次回はもうちょっと考えるべきか。

帰国前

だいたい誕生日を過ぎたあたりから、人に会う予定を立て始めた。全体のスケジュールとしては1/23の昼過ぎに帰国、28まで東京に滞在して、29から2/10までは実家に滞在しリモートワーク。そして2/11からまた東京に移り、2/18まで人に会い続ける、という感じ。滞在している間ずっと有給をとっているわけではなく、間にリモートを挟むことで擬似的に帰国を長くしている。東京に滞在している間は帰国日と出発前日を除いて大学の友人二人の家に泊まらせてもらった。アクセスもよく非常に助かった。
お土産は基本的にフランスのクッキーやクレープスナックを買っていて、親族は紅茶や石鹸、親しい大学の後輩にはフランスで買った本やZINE, 新聞を持って行った。親しい友人には最近知ったパンにお供になるタペナードというオリーブペーストを。スーツケースは服よりもお土産でいっぱいになっていた。

大量のお土産

滞在許可証の更新に振り回される

帰国の準備をゆったりしたいところだったが、そういうわけにもいかなかったのはいつものことである。実家のDM作業があったり、名刺を切らしていたので数日で新しいピクセルフォントを作って帰国の前日にマイナーアップデート版を入稿したりしたのだが、一番の懸念は滞在許可証の更新であった。
フランスは就労ビザで移住した場合一年目は滞在許可証のカードをもらえない。パスポートとそこに貼ってあるビザが身分証代わりになる。カードがもらえるのは最初の更新を終えた後なのだが、よく見るフランス在住の日本人のブログでも、同じく数年前に移住した同僚も、みんながみんなフランスのその手の手続はやたら時間がかかるから早めに取り組んだことがいいと言っていた。自分のビザの更新は3月で、3ヶ月前から申請ができるということで12月の頭に書類は大体揃えたのだが、手続きのための警察署へのRDV(受付予約)はスマ納めにかかりきりだったのもあり先延ばしにしてしまっていた。(本来メールか何かで知らされてもいいところを自分が予約を取る必要があるというのも面倒ではあるが)
一月に入り、そろそろ帰省前でも後でもいいから予約をしておくかとRDVの窓口を探したが、コロナもあってしょっちゅう手続きの方法が変わってどれで予約すればいいのかなかなかわからない。ようやく見つけて自分の情報を入れていざ日時を確認してしようと見るも「あなたの番号は予約できません」みたいなエラーが出てくる。何日か試してみても状況は変わらない。忠告を受けながらも余裕をかましていた自分は流石にこの時一気に焦った。問い合わせ窓口に更新三ヶ月前すぎてるのに予約できないんですけど…と連絡を送ってみるも、返信は返ってこなかった(というか、今でもまだ返ってきていない)。

さらに数日後、また予約日時を確認したらスロットが表示された。単純にスロットが埋まっていただけっぽい。しかしここでさらりと問題が解決したわけではない。表示された最短の日程は6月だった。6月!?今1月ですけど。5ヶ月先まで空きが一切ないのか?とりあえず6月のスロットを予約して、期限が過ぎても大丈夫かどうかを確認したがどうも怪しい。問い合わせをするべきか、でも問い合わせは返ってこないし…とやきもきしているうちに、帰国が数日後にまで迫ってきていた。
そんな中こっちでできた日本人の友人から連絡をもらう。どうもスロットは毎週月曜日にキャンセル分が反映されるらしい。今の予約をキャンセルしてスロットを見直してみたところ、なんとか次の日、フランス出国の二日前に予約を取ることができた。(今の予約内容をキャンセルしないと別の予約ができないのも結構きつかった。)その日中になんとか書類を用意して、次の日職場近くの警察署に出向いて、当日書類が足りずに近くのコピー屋で印刷したりしたが、なんとか更新手続きを終えてレセピゼ(仮滞在許可証みたいなもの)を手に入れることができたのだった。

最終的に最近手に入れた滞在許可証

1.23 全く寝れない飛行機

そして帰国の日。17時過ぎの飛行機だったのでその日は睡眠時間を短くして、朝早くから仕事を始め、早めに終えてシャワーを浴びて空港に向かう。会社の見本帳を土産に持って帰ろうとするも前日に持って帰るのを忘れたため、パリ北駅まで同僚に持ってきてもらい受け取った後、またRER Bでシャルル・ド・ゴール空港へ。今回もJALに乗り込み、機内食を食べてさあ寝るかと思ったが全く寝れない。本当に寝れない。睡眠時間を短くして、アイマスクをつけて、ヘッドホンで遮音して、機内食でワインを飲んだのにそのフライト中一睡もできず、13時間半起きっぱなしで日本に帰ることになった。
最近は機内で気になった漫画を一気読みすることにしている。映像はどうも集中できなくてみれても一本だし、ゲームも同じ。近くの人への騒音も気にしてしまうし。今回はジークアクスの予習のために逆襲のシャアを見て、漫画は石川さんに教えてもらった『イムリ』を読んだのだが、これがもうめちゃくちゃ面白かった。やや最初の設定が難しくて覚えるのに時間がかかったが、途中から加速度的に面白くなっていき、眠いから寝たい、でも続きを読みたいという欲求に引っ張られるまま26巻まで読み終えてしまった。ややポリティカルな内容も含んでいて、少し去年プレイしたメタファーを通じて感じるところもあった。ぜひ読んでみてください(石川さんも鈴木さんに教えてもらったらしい)。

帰国時のJALの機内食

到着後、でかいスーツケースをAmexの優待で実家に送って浅草のホテルへ。やっぱり日本に帰ったら風呂に入りたいと思っていたので、温泉付きのドーミーインにした。部屋で数時間休んだあと、最初の予定であるCilviaくんとの夕食で同級生に教えてもらったみつヰというラーメン屋に行った。やや日本では高めの値段設定ではあったもののフランス目線からすれば破格。縮れた太麺はよくスープが絡んで、スープ・麺・具どれも非常に美味しい。入ってからどんどん並び始めたのでタイミングも良かったと思う。またいきたいところ。
Cilviaくんはいつの間にか埼玉の方に引っ越していて、車に最近ハマっているということで首都高で軽くドライブに乗せてもらった。湾岸を走って東京という街を見る。この前世界中を旅しているフリーランス契約している同僚が、日本は一番未来を体現している街で好きだと言っていたが、確かにそうかもしれない。見渡す限りの明かりと高層ビル群はフランスと比べると壮観だし、そもそも東京は相当広い。
帰り道、疲労が限界に達し、運転がうまかったのもあってしっかり寝てしまった。ホテル近くにおろしてもらってその日は解散。温泉を入って夜鳴き蕎麦も食べて、ぐっすりと寝た。

Cilviaくんと食べたみつヰのラーメン 東京の夜景

1.24 ジークアクスにニッコリ

次の日の朝。昼に予定があったが、ジークアクスを見たかったので朝早くから朝食を済ませてその日泊まる銀座のホテルに荷物を預け、日比谷にジークアクスを見に行った。9:15分の回。ドーミーインの朝食は美味しかった。タイムラインで相当な盛り上がっていたし、同時にネタバレにも相当配慮している感じがあったので、何がなんでも見に行かなければと思ったが、浅いながらもファースト好きで同時にジオン大好きだった自分としてはもうオタクの妄想の具現化みたいな感じで最高だった。作品そのものの面白さはもちろん、知っている人が制作に携わっているものが世間でこれだけ盛り上がっているというのも嬉しい。後半は意図とか今後のストーリーはまだよくわからなかったが、これからのアニメでわかっていくのだろう。

ドーミーインの朝食 ジークアクスの看板

その後は渋谷へ。いく途中、新橋で銀座線とチラリと見たらありえないくらい人がいて驚いた。ホームどころか階段の上まで並んでおり、パリも人口は多いものの圧倒的な東京の人口密集を感じた。
渋谷では、石川さん橋本麦さんginreiさんとらーめん穀雨へ。昨晩もラーメンでラーメン続きではあるが、素朴ながら美味しい。次回はタンメンも試してみたいと思った。その後は石川さんのスタジオで何時間かいろんなことを話した。3Dプリンタ、電子工作、FPS、etc…自分はわからない領域も多くて頷いている時間も多かったが、Glyphsやフォント技術の部分で話せる部分もあったので良かった。麦さんは初めてあったのだが、初手が「MONO NO AWARE / かむかもしかもにどもかも! (imai remix) 書体デザイナーの視点からタイポグラフィどうすか?」で笑った。話していても、他の領域へのハードルの低さや気になったことをどんどん聞いていくスタンスがTwitterそのままで、形作っていくのだなと感じた。他には石川さんに本を見せていただいたり、ginreiさんに石や既刊をいただいて、その後もShibuya Sakura Stageの本屋を見たりまたカフェでフランスの生活について話したり。

石川さんたちと食べた穀雨のラーメン

夜、姉の知り合いがキュレーションに携わっているDIESEL ART GALLERYのdeep sea fishという展示のレセプションへ。海外の人も多くいた。展示自体は自分には理解が少し難しかったが、ミームを元にした作品らしい。フライヤーをデザインしていたのが以前gggで展示をしていた八木さんで、レセプションにもいらしていたので、一度Twitterで反応をいただいていたのもあったので軽く挨拶させていただいた。てっきりほとんど認知されていないだろうと思っていたものの、案外色々と見てくださっていたらしく、スマブラの大会のデザインなどもゲーム自体が好きで結構触れてくださり、一時間くらい色々と話すことができて嬉しかった。今度帰った時にはまた八木さんと仲のいい方々と食事でもという話になったので、来年が楽しみだ。
その後は姉と姉の友人と渋谷でお寿司を食べて、次の日の従兄弟の結婚式式場近くのホテルで就寝。人へに家族4人というなかなか密度が高い部屋で面白かった。

1.25 従兄弟の結婚式が凝りすぎててすごい

次の日、母方のいとこの結婚式と披露宴へ。半年ぶりくらいに成人式くらいに買ったスーツを着たらかなり腹周りがキツくなっていて、パリで明確に太くなったことを自覚した。これを受けて3月くらいから運動をしている。
従兄弟は自分と同い年で、かなり身長が高くパートナーの方ともども衣装も相待ってモデルみたいだった。式もかなりユニークで、お互いが漫画・アニメで仲良くなったということもあり受付の段階からお互いの好きな作品のグッズが大量に並べられていたり、ウェルカムボードが漫画をオマージュしたイラストになっていたり、受付時にお色直しの後に新婦が着るドレスをラブ&ベリーのカードを選んで投票する仕組みがあったりとこの時点から相当な力の入れようを感じた。披露宴でない式の方は初めて参加したのだが、なんか会場のスタッフの方がすごいプロフェッショナルで面白かった。

だが、すごかったのはここから。披露宴ではテーブルごとに好きな作品が割り当てられていて、席ごとにプロフィールを載せている栞のようなものでも漫画やアニメの熱が存分に描かれていた。披露宴中は四方の壁を使った映像に始まりあいさつ、ケーキ入刀、兄弟の挨拶からお色直し、そしてその間人生の振り返りのスライド、そろそろ入場かと思ったら会場に面した道路でオープンカーに乗って衣装を披露しつつ会場に手を振り、再度入場の際は各テーブルにある花を集めてブーケを作り、新婦に渡すという企画。新郎に花を手渡す人はランダムに選ばれていて、乾杯のシャンパンが一部の人だけ赤くなるという演出で、自分のテーブルは自分が渡した。
その後もペンライトが配られてそれを振りながら新婦の入場、受付の際のドレス選びで正解を当てた人から抽選で選ぶギフトプレゼント、そして最後には両家ご両親と新郎新婦の挨拶、そして当日撮影された映像が流された。本当に盛りだくさんで、急いで食べないと食事が間に合わないほどだった。結婚式は相当なお金と時間がかかると聞くがそれも納得な内容だった。自分がするとしてもここまで力を入れられる気がしない。

披露宴中に花を手渡す私

昼過ぎに式が終わって、親族にお土産を渡したり写真を撮ったりしたあと、家族で日本民藝館へ。相当式で疲れてはいたので休みつつだが、企画展の仏教美学を見て、その後近くの松濤美術館の須田悦弘展へ。民藝館は4,5年ぶりくらいで、松濤美術館は初めてだった。仏教美学の方は疲れていたのと写真が撮れなかったのもあり面白かったがあんまり覚えていない。松濤美術館で展示をされていた須田さんは多摩グラを卒業したのち日本デザインセンターに一年だけ勤務されていたらしく、勝手に似ているなと感じるなど。花々の非常に繊細な作品がところどころに配置されており、見る側にとっても面白い展示であったし、多摩美の課題の繊細なするめの彫刻や広い空間を使った配置がされている早い時期の作品など、見応えのある展示だった。
見終わった頃には遅い時間になっていて、タクシーで渋谷に移動してヒカリエのd47食堂で夕食。いろいろな地域のご飯をシェア。何を食べたかあんまり覚えてないが丼が特に美味しかった気がする。その日は家族と別れ、自分は戸越の友人の家へ。

日本民藝館の入り口 須田さんの展示の花

1.26 大学の友人のライフステージがみんな進んでいた

泊まらせていただいていた家では友人二人がルームシェアしていて、朝片方と近所のミスドへ。久々にミスドの中華を食べた。ついでにドーナツも。シンプルながら結構美味しい。
その後、昼過ぎには草野さんの事務所に伺って、お土産を渡しつつ3,4時間くらい色々とお話をした…というか、ほとんど自分は聞いていただけだったが。話がハイコンテキストでついていくのに精一杯で、AIの人間性だとか、ブルシット・ジョブ的なことだとか、陰翳礼讃のことなどを聞いていたと思う。デザインの細かいところをだけにしか目が向いていない自分より遥かに高い視座の話を聞けるのは毎回刺激になるので、今後もお話を聞けたら嬉しいが、自分が相槌だけになってしまう申し訳なさもある。

ミスドの朝食

夕方、大学の同級生6人と集合して五反田のばかたれという親鳥専門店で夕飯。ご飯が美味しかったのはもちろんだが、去年籍入れただの婚約して来年結婚するだの新しい彼女ができただの転職しただの、なんかみんな年齢相応のライフステージを進めていて謎に焦りを感じた。まあ、自分は当分は仕事に集中したいとは思っているが、もうそろそろ30も近いのでそういった時期なんだなと結婚式もあり感じる。
食後は何人かで泊まってる友人宅に行って、お土産のキースヘリングの仕掛け絵本を開けたり、久々に飲みながらスマブラしたりして遊んだ。

親鳥専門店での夕食 お土産のキースヘリングの仕掛け絵本

1.27 オフライン収録の快適さにテンションが上がる

朝は近所のなか卯でご飯。なか卯に入ったのは初めてかもしれない。照り焼き丼と親子丼のハーフアンドハーフみたいなのを食べたけど美味しかった。
その後、まず銀座へ。銀座駅と東銀座駅の間からGINZA SIXにつながっている通路でなるモスキート音を聴くと懐かしい気持ちになる。NDCにいたときはよくここを通っていた。軽く服とかを見てみるも、特に欲しいものはなく本来の目的のgggの菊池敦己展へ。展示自体はアート寄りの内容で、色指定や質感をハックした面白い展示だったが長居する展示でもなかったのでさらっと見終わった。

gggの展示

その後は渋谷、Factoryというカフェで工藤くんと食事。ここはタカヤさんに教えていただいたお店なのだが、基本的に空いている上ご飯やスイーツが美味しくて表参道も近いのでかなり重宝している。いつも気になっていたものの注文したことがなかった餃子定食を頼んでみたが、カレーと並んでなかなか良かった。食後にデザートも。
仕事や卒制、卒制展などを話を色々聞かせてもらいつつ、卒制の本を見せてもらった。本とディスプレイだと展示がこぢんまりとしてしまうことや読みづらいことへの対策として見開きを並べた展示を行ったり、本自体の構造や進め方、作品の見せ方などとにかく「上手い」という感想が出てくる。行き当たりばったりでなんとか終わらせたような自分と比べると、計画的で先人から吸収しまくっていてまるで二周目のようなスムーズさを感じた。

その後、確かABCとかに寄り道しつつ夕方荻窪へ。大成さん墨とPathの収録をレンタルスタジオでやるために集合。本来はゲストを交えて3人で行う予定だったのだが、急遽予定がずれてしまって2人回となった。自分がダイナミックマイクを持ち込み、大成さんが新しく買ったオーディオIFのAudient EVO8を繋いでその場でセッティングを試しながら録音。パリ日本の距離差がなく同じ空間での収録はあまりに快適すぎて、部屋の時間ギリギリまで喋り込んでしまった。内容としては初回の収録の振り返りとか、2024年の音楽やYouTubeのリキャップを振り返ったり、ガジェットを振り返ったり、良かった漫画を話し合ったりと。
しかし、あまりにテンションが上がりすぎて声量も上がってしまい音割れしてしまい、また時期も遅くなりすぎたためこの回は結局没にすることになった。いつか文とかに起こすかもしれません。分からんけど。レンタルの時間ギリギリに退室し、寄港地という居酒屋で海鮮を堪能した。魚がうますぎる。自分もようやくタイプデザイナーになったことで、大成さんと一段深い書体デザインの話ができて嬉しかった。あと、スマ納めのグッズ類も受け取ることができたし。

大成さんとのオフライン収録 大成さんから受け取ったスマ納めのグッズ

1.28 横浜に行って岐阜に帰省

やや風邪っぽい体調。疲れが嵩んだか。昼前に横浜に行き、Niviくんと大瀧さんと会ってお昼に牛タンを食べる。たん美味しい。神村さんから昨年事務所の移転の連絡をいただいていたのだが、その時は伺えなかったので今回大瀧さんとNiviくんを誘ってお邪魔することにした。
オフィスは横浜駅から地下鉄で数駅いった落ち着いたところにあった。室内は広々としていて、Normの展示もされていた。神村さんとお会いしたのはかなり久々で、リテイル書体の役割だとか、デザインスタジオとファウンダリの並行することの難しさなどを伺ったり、いろいろな資料を見せていただいた。また、Normの展示については、小さい文字でグレーを出すときにK版では網点の粗さが目立ってしまうためグレーの特色を使ったりといった話を教えていただいた。自分よりも、同じくフリーランス的な働き方という点で大瀧さんがよく話されていた。

detailでされていたNormの展示

夜は浜松町でEGSの面々といつもの中華。とはいえ、到着時点では自分しかいなくて、各々用事や仕事があり時間が過ぎてからポツポツ集合。お土産を渡しつつスマ納めの話を聞いたり最近の案件の話を聞いたりとか。もう付き合いも3年近くになるが、その間にクリエイティブの界隈の人や関係性も変わったりとか、各々の環境の変化を感じた。あと、いつもこの店に行くのでお店のメニューのこれが最近発見して美味しかっただとか、そういうメタも変化してて良かった。
終電近くの時間は先に抜けて岐阜に新幹線で帰宅。次の日からはリモートワークにしていたので。

風邪に苦しみながら労働

実家に帰ると、フランスにいる間に注文した品々が届いていたので開封していく。自分は岐阜というアクセスしやすい立地や、両親が頻繁に東京に来ることもあり、割と上京してからも実家に戻ることが多かったので実家を拠点として使えるのはありがたい。子供部屋は本棚で詰められていてかなり狭くなってしまってはいるのだが。
フランスで電子機器を買おうとすると、税の問題なのか大体2割くらい日本円で買うよりも高くなってしまう。数千円単位の違いならともかく、5万10万のものを買おうとすると1–2万は違いが出るわけで、買い物好きな自分にはこの違いは大きい。もう5年近く使っていて充電が一日持たなくなっていたApple Watchと、前からPCゲーのために買いたいと思っていたSteam Deckを手に入れた。限定カラーの白。他にも、ロゴタイプや配信画面をデザインさせていただいた昏昏アリアさんの誕生日グッズで配信画面のために作ったグラフィックを使いたいと連絡を受けていたロックグラスも受け取った。ありがたい。

白いOLED Steam Deck

有給は10日くらいしか取っていなかったので、岐阜にいる間は日本の時間でリモートワークをしていたのだが、風邪がなかなか治らなくて厳しかった。低速運転でなんとか仕事をしていく。仕事の環境をほとんどフランスに持ち込んでしまったので、オーディオIFやドッキングステーションがなく、色々と充電や接続、音周りの不便さもあり、簡易的な環境を整えようとUGREENのUSBハブとZOOMのオーディオIFであるAMS-22、そして二酸化炭素濃度を測ってみたいと思ってeAir3というCO2センサーを買ってみた。AMS-22は3.5mmの入力があるので、HDMI切り替え機からPS5の音をミックスするために選んだ。
USBハブは問題なかったのだが、AMS-22はなぜか音楽を流すと頻繁に止まる現象が発生してしまい、再起動してしまうと直るのだがちょっと待つと再発する。調べても情報は出てこないし、ハブ経由で繋いでも直接繋いでも変わらない。Audio MIDI設定のフォーマットの問題かと思ったがそれでも解決できず。結局使ってはいたがちょっと残念だった。とはいえ、普段使っているAudient iD14をもう一個買うのも厳しい。いい感じに3.5mmかADATをミックスできるオーディオIFないかなあと思いつつ。eAir3の方は最初のWiFi接続と設定ができなくて困ったが、フランスのWiFiでやったら行けたので、実家の回線の問題だったのかもしれない。充電が数時間しか持たないので結局常時繋ぎっぱなしになること以外はかなりいい。思ったより二酸化炭素濃度はすぐ高くなってしまうことがよくわかった。にしても、ZOOMの製品ってなんでなんかこう見た目が…ガジェットガジェットしている。

2/1の土曜日には、三重から来てくれた昔からの友人と実家のギャラリーの展示を見た。写真家の方の展示で、フィルム写真で毎回一枚しか撮らないらしい。特にアイスランドの写真などは、風景や形状にとらわれないテクスチャの感覚というか、写真を一段階広げたような絵画的な感覚が自分には新しかった。実物のフィルムの質感も美しい。ちょうど在廊日だったので、ご挨拶もして写真を撮っていただいた。
お昼には自分が日本一美味しいと思っているうどんである信濃屋でご飯を食べて、夕方ごろ名古屋の愛知県美術館でパウル・クレー展がやっていたので見に行った。豊かで透明感のある色彩感覚や抽象化された形状の裏にはやはり若い時代の基礎的な部分の鍛錬があることが見られて、一人にフォーカスを展示の良さを感じる。また、クレーはあまり芸術家のグループには所属をしなかったものの、交流自体はさまざまな人と会ったことも包括して展示していたのが良い。
その後は栄を中心にぶらぶらと買い物。ラシックとか、大須とか。kolorのジャケットが良さそうだったが買っても着なさそうな気がして、特に買うことはなく。夜は焼き鳥を食べた。美味しかった。

信濃屋という地元のめっちゃ美味しいうどん パウル・クレー店での一枚、モザイク模様の絵 夕飯の大須の焼き鳥

日曜日は実家の展示トークのインスタライブがあったので、撮影や機材のセッティングを手伝っていた。自分が卒論のインタビューに買ったものの以後使っていなかったDJI Micを使ったら、そこそこ上手く回っていて良かった。マイク2つに対して喋る人が4人くらいいたので、そこはやや煩雑そうではあったが仕方ないだろう。DJI Micは今後も使わないと思ったので、実家にそのまま置いてきた。いつものパターン。

日本の美味しいものを食べまくりつつHadesで遊びまくり、週末は大阪へ

次の週は同様に岐阜で、仕事をしながら休憩時間にSteam DeckでHadesをひたすら遊んでいた。かなり中毒性があって楽しい。最後まで到達するのにはなかなか時間がかかったが、スキルのシナジーが噛み合った時の気持ちよさは素晴らしい。昼や夜はなるべく日本を摂取するべく、一人で回転寿司に行ったりハンバーグを食べたり、同じく留学していて帰ってきた弟と鰻を食べに行ったりした。一方で、仕事後は2/17のコミティアの原稿がいまだに終わっていなかったのでひたすら原稿を進めていた。今ブログを書いていても感じるが、文章を書くのには意外に集中力を使うし時間もかかる。なんとか岐阜を出る直前に文章は完成した。
その間、いくつか追加で買い物も。いつもお気に入りの服が見つけられるF/CEでプルオーバーを2着とパンツを1着買った。発送が少し遅れたもののかなり良くて今も愛用している。特に年初めに買ったAcneのジャケットともよく会うのが嬉しい。また、ヨーロッパの風景を動画で残しておきたいなと感じて、Osmo Pocket 3を買った。高かった。DJIの製品は買ってはあまり使わずに譲り渡すことが多いので、今回は使い続けられるといいのだが。
日本は多少パリよりも暖かいだろうと思っていたが、寒波の影響でかなり冷え込んでしまい、薄着しか持って帰ってきてなかったので辛かった。まさか雪まで降るとは思わず。

地元で弟と食べたひつまぶし。これを食べないと始まらない 勢いで買ってしまったOsmo Pocket 3 帰省中、急な冷え込みで降った雪

週末、2/8の土曜日には再び名古屋へ。お気に入りの美容室で髪を切ってもらって、軽く栄や大須をぶらついてこの前行けなかった店を見た後、挨拶に祖母の家に行き兄弟3人とお寿司を食べて、食後にはケーキなどをいただいて色々と話した。なんだかんだ帰るのが遅くなってしまい、夕方に予定していたオフドカ部対抗戦のミーティングに遅れてしまい申し訳なかった。
日曜日は朝から大阪へ。中之島美術館でヨゼフ・ミューラー=ブロックマンと吉川静子展を見る。二人の展示というタイトルではあるが実際のところは8割近く吉川静子にフィーチャーした展示だった。しかし、ブロックマンの作品は大学でよく見る機会があったものの、吉川静子氏の作品はほぼ見たことがなかったので初期の作品から心境の変化や状況の変化がダイレクトに反映され変容していく作品群を見られたのは非常に面白かった。色面から立体へ、影、境界、交差と規則的なパターンで作られていた作品が、人生の変化を受けてより自由に、開放的なアート群となっていったのを解説とともに見られたのは行った価値があると感じられる。終盤にはデザイナーとしてポスターを作っているコーナーもあり、そこでは日本人的な感性とスイス・タイポグラフィの交わりが見られて興味深い。
ブロックマンの部屋は一室だったものの、有名なmusica vivaのポスター群はもちろん、初期のイラストレーターとしての作品やスケッチが見られたのは勉強になった。トートバッグと図録を購入。

名古屋の地下鉄直結の地下街の景色 大阪中之島美術館の看板 吉川静子氏の作品

その後、スマブラ関係のインターネット友人10人くらいでいわゆるオフ会。遠くから来た人含め梅田駅で集合しようとしたために集合に30分くらいかかってウケた。Twitterで見るやつじゃん…という感じ。その後、ボードゲームバーでボドゲをしたり、SwitchやPCゲームで遊んだり。自分は最初持ってきたいかさまゴキブリとかいくつかのボードゲームで遊んだが、途中からずっとスト6をしていた。久々の対戦が面白すぎた。5時間くらい遊んだあと夜はトリキに。食欲に胃袋が追いつかず結構満腹になってしまったものの、普段Discordで話すこととはまた違うことを話せてよかった。
二次会に行く人もいたが、主催の人が体調を崩して一次会で帰られたことと、自分も明日は仕事だったので新幹線で帰った。

オフ会のぷよぷよの様子

次の日は仕事。自分の家族は毎年正月に家族全員の集合写真を撮っているのだが、今年は自分はフランス、弟は留学していて撮れなかったので唯一撮れるタイミングということで午前中に家族写真を撮った。お昼、実家のギャラリーのカフェが地元の定食屋さんを招いて別の形態に変わることになり、テスト営業期間中とのことでオムライスをいただいた。美味しかった。
夕方にはいとこの家に行って挨拶して話したり、犬と触れ合ったり。夕飯は祖母の家でカニすきを食べた。次の日にはまた朝から東京に行かなければいけなかったので、その夜急いで荷造り。東京に行く日の前日は、なんだかんだ夜遅くなってしまうことが多い。

従兄弟の家の犬と戯れワイ

2.11 良いご飯を食べた後、体調を崩す

朝、9時ごろの新幹線に乗って東京へ。そのままフランスに帰国するためなかなか荷物が多い。新幹線の大きい荷物の取り扱いがいつの間にか変わっていたみたいで、大きい荷物を収納するには一番後ろの席を取る必要があったのだが、普通車では見つけられず、どうせならばと初めてグリーン車を取ってみた。広々としていて周りはApple製品を使ってる人しかいなくて面白かった。天むすを食べながら東京へ。
荷物を友人の家に置いた後、渋谷のTRUNK (KITCHEN)Cumuloworksさん、藤井南さんとご飯。多分店自体は5年以上前から雑誌か何かで見てピン留めしていたのだが、そこそこの値段がするので個人でいく機会もなく、ようやくいけた。ビールを飲みながらデザートまで何品かのコース。美味しかった。Cumuloworksさんは映像の界隈で何故か繋がりがあり、たまに作業通話などに入らせていただくが、映像のみならずアプリやWebサイトまで自作力が高くて話も面白いので嬉しい繋がり。今まで軽く挨拶しただけだったのでお食事にもいけてよかった。何気に歳も近い。藤井さんは2年前の卒論のためのインタビューぶりで、カメラの話とかをした。

新幹線のグリーン車で食べた天むす TRUNK(KITCHEN)の外観 TRUNK(KITCHEN)のご飯

お二人と別れた後、まずはFREITAGに行って、5年前に買って愛用していたバックパックの修理を依頼した。3週間程度かかると聞いたので持ち帰ることはできなかったが、来年帰った時に受け取ろうと思う。修理ができるのはありがたい。宮下パーク地下のBYOD²という展示を軽く見に行った。誰もがアップロードできる自由な展示らしい。さらっと見た後、宮下パーク内の店もさらっと回ったのだが、ここで少し疲れを感じてベンチで休む。その時は寝不足のせいだと思っていたが、今思えばこれが体調不良の始まりだった。
その後、表参道に用事があったので、Graphpaperとユトレヒトに寄り道しつつ向かうちょうどストリートファイターリーグの国内Grand Finalもやっていて、応援しているチームが出ていたのでイヤホンで聴きながら。決着の瞬間は道端で止まって見た。カワノ選手がLeshar選手を2回も倒した時は本当に手に汗握る瞬間で、優勝が決まった時は思わず拳を握り込んでしまった。その後はGYREに行ってよくわからんなと思いながら現代美術の展示を見て、用事を済ます。この辺りから体調が一気に悪くなってきて、謎に汗が出たり、お腹を壊したりし始めていた。

夕飯は高専の友人とご飯を食べる予定だったのだが、体調が本当に終わってしまい、電車も何回か途中で降りてお手洗いに駆け込んだりしていた。集合場所近くの座れる場所で1, 2時間座り込んで、結局会っても到底夕飯に行ける感じでもなく、お土産だけ渡して新宿あたりまで一緒に電車で行って別れた。その後止まった友人宅でもろくに動けず、その日は素直に寝た。

2.12 昼の予定をキャンセルし、原稿を書き、無理やり夕飯に行く

この日は昼畔上くんとご飯を食べに行く予定だったのだが、体調があまりに芳しくなかったので本当に申し訳ないがキャンセルさせてもらうことにして、友人宅の近くの病院に行った。海外に住んでいるため保険が適用できず料金が不安だったが、そこまで高くはなくて安心。薬をいくつかもらって、水分をとりながら薬をいくつか飲んだらかなり楽になった。友人に気を使わせるのも悪いので、その日は近くのホテルを昼から取ってそこに入った。アパホテルでも東京だと高い。インバウンドの苦しさを感じる。
コミティアの原稿は東京に来る前に終わっていたものの、組版などは全然できていなかったので、その日は一日写真の書き出しとか組版に当てていた。
夜はキスケさん、小原くん、Niviくんとご飯の予定があった。体調もかなり良くなってきたので渋谷に向かって、少し時間に遅れてしまったのものの唐揚げや刺身など、「日本の居酒屋」っぽいものを食べた。キスケさんが独立前だったり、それぞれ状況が変わりそうなタイミングだったのもあって、仕事の話、デザインが好きかどうかの話とか、会ったからこそ話せることをたくさん話すことができて楽しかった。キスケさんや小原くんは僕の書体を使ってくれているので、改めて会うと自分ももっと使ってもらえる書体を作ろう、完成させようという気持ちになる。

2.13 Adobe MAXに行って思いがけず色んな人と会う

万全とは言えないが、体調もほとんど回復したのでビッグサイトにAdobe MAXを見に行った。AI系にはあまり興味がなかったので、タイポグラフィや書体などのトークを中心に選ぶ。Adobe Fontsのブースでは大成さんが忙しそうに対応をしていて、声をかけられそうにもなかったので最初なIllustrator2025アップデートの文字組周りのトークへ。思った以上に色々改善されているらしい、というかいろんな不具合があったらしい。その次は服部さんの百千鳥の技術面のセッションに。個人的には一番面白いセッションで、仕様周りを勉強し始めた自分にとって高さも幅も変わる書体がどのように縦組横組で綺麗に動作させるのかなど興味深い話が色々と聞けた。今思うと、横幅に応じて高さも変わり、常に面積が一定になるのは非常に賢い処理だと思う。横幅だけの軸にすると密度が相当上がってしまうし、両方の軸を作ると両方最小の時と両方最大の時でわざわざ同じ比率のマスターを違う太さで2つ作る必要もできてしまう。密度をキープしたまま縦横幅を変える今回の処理は参考になるし、他の裏話も聞いてみたいところ。
その後はInDesignのセッションを聴いて、最後は百千鳥のセッションへ。西塚さんと祖父江さんの愉快なテンポで進むトークを拝聴。百千鳥はバリアブルの技術的なところが注目されそうだけど、かなのスケッチなどを見ると字の形そのものがとても美しい。開発の最中、プロトタイプのバージョンをデザイナーの知り合いに使ってもらったりしているのがいいなと思った。自分も近いことをしているし、自分もそういった繋がりを大事にしたい。
トークの後は大成さんに挨拶しに行ったら、いろんな人がブースに集まっていた。西塚さんにもムサビの授業ぶりに軽く挨拶ができたし、MATDの講師で来てくれたFrank、パリと東京で会ったRistoなどに会うことができてよかった。大成さんと百千鳥の看板の前で写真を撮って夕食に向かった。

服部さんのトーク、面白かったスライド。百千鳥開発における懸念点 百千鳥のトークにおけるスケッチ。すでに美しい 百千鳥ブースでの写真

夕飯はふぁーむくんが選んで店でじーにょさんとサカイさんと新橋に鶏を食べに行った。と言いつつも、その日中に週末のコミティアで出す冊子を入稿しないといけなかったので、前半は食べつつも組版作業を進めさせてもらった。元々は1冊にまとめる予定だったものの、200ページ弱くらいになってしまい、そのページを入稿できる企画ではもう納期が間に合わず、その場でじーにょさんやサカイさんに相談。しょうがないが、中綴じで2冊に分けることにした。ある程度まとまったのでその後はご飯を食べながら、仕事の話を聞いたり。夜帰った後はなんとか入稿を済ませた。
(この内容を書いているのが五月の初めで、本当は何話したかとかご飯の味とか色々書きたいんですが、流石に3ヶ月前の記憶が風化しかけていてこの辺りからだいぶ淡白になってしまっています、すみません…)

ふぁーむくんたちとのご飯

2.14 予定がいくつかなくなったので好きに動いたら意外ないい出会いが生まれる

この日はもともと昼には大学の友人と食事、その後大学の後輩(といっても会ったことはない)とお茶、夜は元NDCオンスクの方々との食事の予定だったのだが、大学の友人とオンスクは予定が合わなかったり、近い方が体調を崩されたりといった都合でなくなってしまった。残念ではあるけれど大学の友人とは日本帰国直後に会っていたし、オンスク勢もまた別の機会に会えるだろうと気を取り直して、体調を崩している時に行けなかった展示を見に行くことにした。入稿も終わったし、いつもはMBPをカバンに入れて歩き回っているのだが、思い切って置いてきた。
最初は印刷博物館に行って、世界のブックデザインを見た。今回の同人誌には活かせなかったが、完全版や今後の本に活かしたい装丁を色々とチェックして、写真は撮れなかったのでメモっていった。世界のブックデザインは国ごとの特色みたいなものも見えてくるのが面白い。後日行ったgggの展示を見ても思うけど、中国の本の予算はいったいどこから出てくるのだろうか。
印刷博物館から移動して市谷の杜 本と活字館で、白井先生の事務所がデザインを行なっている書籍用紙の世界の展示を見に行ったら、ちょうど最近独立された三橋さんが展示を見られていることをTwitterで見かけて思わず連絡。急いで活字館に向かって、色々と話を伺いながら展示を解説していただいて、より一歩深い視点で展示を体験できて嬉しかった。正直なところ僕は書籍に全然詳しくなくて、組版もそこそこ紙はさっぱりだったので、貴重な体験だった。展示されている紙を製本できるコーナーがあったのだが、あまりにも人が多くて30分くらいかかりそうだったので諦め。書籍本文の展示に人がごった返しているというのもなかなか凄まじく、嬉しいことでもある。聞いた話によると、同人系の人も多くきていたらしい。印刷博物館とこちらで本もいくつか購入した。
活字館のベンチで少し話した後、どこかでお昼でもということになったので市ヶ谷のモスでもう少し色々と話を伺う。思えば三橋さんとはじっくり話す機会が今まであまりなかったので話せて嬉しかった。思わぬところで知っている人がつながっていたり、思っている以上に期待をいただいていたりと、改めて気が引き締まった。毎回書いているかもしれないが、実際の日本に帰って色々な人に会うと、色々と気力がもらえる。

本と活字館での書籍用紙の展示。かなり盛況

その後、今年視デを卒業されたヤマダさんに卒制の話とかを伺った。工藤くんや畔上くん同様、卒制に観に行くことができなかったので。来年以降はできれば時期を合わせたいと思う(といっても、もう在校生の知り合いはほとんどいないけど)。今まで会ったことはなく、TwitterでGlyphsのリプライをするくらいだったのだが、書体の授業を取られていたり、卒制も花形装飾を作っていて気になっていたので、展示の内容を伺ったり本を見せていただいた。振り返ってみると別に年もかぶってない上の世代の卒業生から突然誘われるのは怖すぎるのであまり良くないかもしれない。話が逸れたが、花形装飾は文字のデザインとはまた違った着眼点が求められると思うが、季節をもとにバリエーションが思っていた以上に何倍もあってまず量から凄まじい。展示は写真でしか見れていないが、本だけでなくカードやポスターまで展開して見せるやり方が来場者にも目を引きそうで綺麗だと感じる。

その後は石川さんに教えていただいた古本屋さんを巡った。中目黒、学芸大学、渋谷など。いくつかいい本が買えてよかった。本当は石川さんが持っていらした『デザイン対話 再現か 表現か』を書いたかったのだが見つけられず。最後に行ったがのが渋谷のまんだらけだったのだが、地下に広がる空間は本だけでなくフィギュアやゲームなどが高く積み上がっており外国人観光客も多く、まさに魔境といった雰囲気だった。夕飯の予定がなくなったので泊めてもらっている友達と町中華を食べた。日本に帰ったら町中華が食べたい。町中華の誘い、お待ちしております。

巡った古本屋の一つ 友達と食べた町中華 この日買った本

2.15 DIC川村美術館へ

この日は惜しまれつつも閉館してしまったDIC川村美術館に行った。元々の閉館予定では行けそうになかったが、閉館が決まってから多くの来場者があったことで延長されたらしく、ありがたいことだ。まあ、一番いいのは閉館しないことなのだけど…
午前中、流石に前日には出さなければとコミティアの告知を出して、昼前に銀座gggへ。イベントの告知を出すのが遅い人を見て勿体無いなあ、などと感じることがたまにあったが、いざ自分の身になるとそんなことをしている場合ではなかった。gggでは前来た時とは展示が変わり呂敬人展に。1階や地下の書物を見ると、本当に本かこれ?みたいなものがたくさん並んでいる。市場に流通している本というよりも、政府のアーカイブのためのアートといった領域だ。昔の詩人2人の手紙を記録した本など、テーマそのものも中国の歴史を感じる内容であった。小口への印刷とかは面白かったし、いつもは見ない上の階はもう少し市場に流通してそうな本だったし、人生を辿れるコーナーがあってボリュームたっぷりだった。その後は大学の友人と銀座であいがけのスパイスカレーを食べた。本当はうどんとか食べたかったけど、銀座はどこも混んでいるのでしゃーない。

gggで見た呂敬人展の作品 銀座で食べたスパイスカレー

元々3人とかならばレンタカーで行こうと思っていたのだが、2人だったので電車でDIC川村美術館の方に向かう。しかし、いざ東京駅で電車に乗ろうとすると遅延してるわ、なんなら途中で止まるわでつくづく運が悪い。途中でJRから京成線に乗り換えて向かったら到着が予定の1時間くらい遅れてしまった。駅からもさらにバスで数十分、ようやくついた美術館は人が多かったが、庭の噴水や湖によってゆっくりとした時間が流れていた。美術館自体のサイズはそこそこ。写真は撮れないので目に焼き付ける。どうせなのでとグッズのTシャツを買った。
夜は昨年末のスマ納めのデザイン勢の打ち上げ兼新年会があったのだが、庭をゆっくりと歩き回っていたらバスを一本逃してしまった。だが、庭や森は冬だから生い茂ってはいなかったものの、広場などもあり家族で遊んでいる姿を見て、親が昔よく出張のついでに美術館に連れて行ったことが思い出されて、少し離れたところにある美術館の広さとその良さを改めて噛み締めた。

DIC川村美術館の庭と湖 DIC川村美術館の広場

遅れて到着した夜のスマ納めのデザイン勢打ち上げ兼スマ勢クリエイティブ新年会は20人近い参加者で盛況だった。最初はりくるとくん、Akameさん、Sqkurqさん、sugaさんらといった映像やデザインの人たちと話してeSports業界の話を聞いたり、後半はスマ納めのスタッフやおすしっくすさん、あかばねさんと話してスマ納めを振り返ったり人生の話をしたり。短かったがいい時間だった。ある程度離れて行っても、今後も交流できたら嬉しい。帰り道は参加してくれた大成さんとちょっと話して友人宅に帰宅した。
次の日はコミティアで、まだ当日建てるパネルやポスターが全く準備できていなかったのと、近いところに泊まっておきたかったのもあり急いでスーツケースに本を詰め、有馬さんのお宅にお邪魔する。有馬さんと近況を話しながらお互い作業。印刷できるアクセアを探し回るも見つからずどうしようと思っていたが、ビッグサイトの近くのアクセアはコミティアに合わせて早く開けてくれていて助かった。ポスターとパネルを入稿して、その日は就寝。有馬さんが泊まらせていただいた挙句色々と役立つグッズも持たしてくださりとても助かった。

スマ納めで展示されていたグラフィティを持ってきてくれた

2.16 初めてのコミティア出展、そんな売れなかったけどその分買ってもらえると嬉しい

コミティア当日。朝アクセアに行ってポスターとパネルを受け取り、ビッグサイトで売り子をお願いしていた小柴くんと合流する。小原くんとFaber!を出しているのもあって、いろいろ質問させてもらったり道具を貸してもらったりした。本当にありがとう。自分の机に辿り着いて設営。思ったよりも狭い。今回出したのは2冊だけだけど、今後複数出すときになったらレイアウトを工夫する必要がありそうだ。自分が配置されたのではデザイン系というよりも写真集や旅行記のエリアらしく、隣の人は同じくヨーロッパの都市の写真を撮っている人だった。終盤には挨拶をして話を伺ったりお互いに本を交換したり。
開幕したら人が続々と入ってくる。会場の広さもすごいのに来場者もすごい。正直個人の戯言集みたいなものなので売れるとも思っていなかったが、やはり最初はあまり売れず、まあそんなもんだよなと思っていたら開始から数十分、高専と大学の後輩が集団で来てくれて買ってくれた。自分は高専の頃の人の繋がりをほとんど失ってしまっているが、いまだに繋がっている人がいるのはありがたい。その後もちょくちょくと買ってくれる人がいた。様子を見るとたまたま見て買ったというより、Twitterでチェックした上で買ってくれた人が多いようだ。名も告げずに「応援してます」と言ってもらえたり。幸せ者である。12時くらいには20部くらい売れていた。
昼、少し時間が空いたので出展していてFFの方々に挨拶しに行った。ひかがみひなみさん、かねこあみさん、伊藤ユキノブさんなど。これは前にツイートしたのだが、おそらく名前を基本ローマ字表記にしているために、最初「書体を作っている安藤です」と挨拶しても「誰だ…?」みたいな反応になり、その後ちょっとして気づかれるみたいなことが多くて面白い。伊藤ユキノブさんとはなんだかんだ30分か40分くらい話し込んでしまった。道端の石くらいの気持ちで名前を知ってもらえてたらいいなという感じで挨拶に行ったら、思ったよりも認知してもらえていて嬉しい。昼過ぎには有馬さんと瀬島さん、双葉レイさんも来てくれた。死ぬほど忙しそうだったのに来ていただけてありがたいし、瀬島さんは相当久しぶりで、双葉レイさんは初めてお会いしたのだがその後いろいろと話を伺えて良かった。他にもyoshihiroさんやイズミさん、加藤千春くんやあをもみじさんなどなど、などなど…自分のブースを目的に来てもらえるって幸せなことですね。初めてましての人にも、久しぶりの人にも挨拶できて嬉しかった。売れたのは合計40部も行かないくらいだったと思うけれど、また出したいと思った。

当日コミティア展示中の私

そんなこんなしてたらいつの間にか閉場の時間が近づいてきて、周りのブースも片し始めている。自分は一応閉場まで待って、時間になってから小柴くんと、そのあとご飯に行く予定だったあをもみじさんも片付けを手伝ってくれて3人でささっと片付けを終えた。その後は道具を返すために有馬さんの家に3人でお邪魔したら、有馬さんと話していた何人かもいて、わらわらとお家で話しながら、台場からの夕焼けを眺めた。
夕飯は小柴くんが一緒にRatoryという本を出しているWentoliaさんを加えて、目黒で牛タンを食べた。食べ放題のつもりで行ったが食べ放題のコースと普通のコースが選べるらしく、普通のコースにしたらいろんな希少部位みたいなのが出てきてパフォーマンスが面白かった。味は良かったしお腹いっぱいになったけど、パフォーマンスが多すぎてあんまり喋れなかったのはちょっと店選びが悪かったかもしれない。それでもいろいろ話せたし、小柴くんが「あをもみじさんって有馬さんになんか似てるんですよ〜」というのを直に見れて良かった。なんか話し方のスピード感が似ている。置いていかれる感じが。ご飯の前には時間を潰すべく目黒の駅で職場用にとらやの羊羹を買ったが、後でパリにもとらやの店があることを知った。本屋に行って雑誌を見たりも。
友人宅に帰宅後、いつもハードワークをしている友人が寿司を食いたいとのことだったので焼肉を食べた後に謎に友人と3人で寿司ドラフトをしながら酒を飲んでオモコロチャンネルを見たりして、寝た。充実した一日だった。

有馬さんのお家からの景色 小柴くん、wentoliaさん、あをもみじさんと食べた牛タン なぜか帰宅してから食べた寿司

2.17 気がつけば最終日 最後まで予定を詰め込む

あっという間に帰国前日に。帰国日は朝の便だから実質最終日だった。昨日出した本をBoothに出したら20人くらいに買っていただけて、またお世話になっている方にも送ろうとしたため合計30人くらいへの発送を友達に手伝ってもらいながら行った。最初は宛名を手書きで書いていたが、あまりに手書きが無理すぎて途中からはイラレで作ってコンビニで印刷し、貼り付ける形に変えた。レターパックライトが思ったよりも値上げしていて驚いたが、スマートレターが使えることを知り、途中で切り替えた。
思ったよりも発送準備に時間がかかってしまい、その後急いで荷造り。本を買ったり食料を買ったりしたので整理し直す必要があったが、なんとか収めた。と言いつつも、体調を崩したせいで買いそびれたものや、忘れたものも多々あるのだが。

この日、昼に何を食べたかあまり覚えていない。食べなかったかも。15時ごろに用事があったのだが、買いたいものがあったので一瞬渋谷へ。去年の末に昔Kick StarterでbackしたNomad [e]というキーボードが届いたのだが、あまりにも使いにくすぎる上充電が切れるので、諦めてAppleのMagic Keyboardに戻ろうと思っていたのだが、自分が使っているものはまだまだ使えるものの充電がLightningだったので、Type-Cに統一したくて渋谷のAppleでType-C対応でTouch IDが使えるMagic KeyboardとMagic Trackpadを購入。結構値上がりしている気がする。円安か。
その後は荻窪に行って、Nipponiaさんにお邪魔する。少し緊張していたが、山田さんと工藤くんと何時間か話した。ファウンダリの話、海外での和文需要の話、スクリプト・プラグインの話など…思えば、山田さんとは飲み会で一緒になることなどはたまにあったが、じっくりと話す機会がなかったので勉強になった。自分の将来の目標の一人でもある。
話した後、近くの大成さんに一瞬会って同人誌を渡して改めて挨拶した。なぜかこの時、風があり得ないくらい強かった。墨とPathをやっているのもあるし、一番仲がいい(と自分は思っている)近しい書体デザイナーなので、今後も続けていきたい。

最後の予定は吉祥寺。夕飯に向かう前に百年に行って軽く本を見てみる。写植の本と、今更ながら買っていなかった欧文書体百花辞典を買った。学生の頃は高くて変えなかったので。その後、白井先生と小原くんとお好み焼きを食べにまりやというお店に入った。
まりやは僕が大学3年生の頃、一時帰国してきた大曲さんと白井先生と3人で夕飯をご一緒した思い出深い店で、お店は移転したもののその後も度々後輩とのご飯に使っている。自分は大体帰国した時や出発するときに毎回先生の事務所に伺って挨拶をしているが、いつもサシなのもと思って今回は小原くんも呼んでみた。前キスケさんたちとあった時に誘ったら、会いたいと言っていたし。結果として呼んですごい良かった。もちろん僕自身の話をできる時間は減るけれど、書体の話だけでなく、会社で働いていく中での仕事の進め方や受け方とか、昔の仕事のページ単価とか、より日々の業務に関わっている小原くんだからこそ聞ける話がたくさんあった。あっという間に時間が経って、帰り道でも小原くんと色々話した。一番近い後輩だし、謙虚ながら色々なことを頑張っているからいつも自分もやらねばという勢いをもらえるありがたい繋がりだと感じる。
そのあと、渋谷で一瞬石川さんに会って、友達の家でスーツケースを回収して羽田空港直結のホテルに向かった。ホテルはヴィラフォンテーヌグランドという最近できたっぽいところで、少し歩くものの屋外に出なくて良いのが手軽でありがたい。チェックイン後、部屋に向かったが廊下がめちゃくちゃ長くて大量に部屋があった。帰国してきた人々か、明日旅立つ人々だろう。部屋に着いた頃には12時をすぎていたので、さっさとシャワーを浴びて、写真だけ取り込んで寝た。

羽田空港のホテル

帰国、そして今

翌朝の飛行機は8時半発だったので6時には起きて空港に向かう。手早く手荷物検査を済ませて(最近の日本の空港はパソコン出さなくていいので楽)、免税店でTHREEの洗顔や化粧水を買い足し、Trip.comのダイヤモンド会員リワードでラウンジが使えたのでラウンジに入ってカップヌードルなんかを食べて待つ。帰りの飛行機は寝れるように教えていただいた耳栓を持って行ったが、使うまでもなく乗ってすぐ寝てしまった。その後耳栓も使ったけど、思った以上に快適で今も夜行バスなんかで使っている。帰りの飛行機は天国大魔境を呼んだり、Steam DeckでAnimal WellやOuter Wildsをやっていたらすぐパリに着いた。

思えば、イギリスの留学で得たものは知識や繋がりもあるが、長い内省の時間だった。自分は弱く、常に繋がっていないと不安な性分でTwitterもやめられなければ帰国のたびにつながりを確かめるようにいろんな人に会う予定を取り付けている。ただまあ悪いことではない。これだけ予定を合わせてくださる人々がいるのはありがたい。今回は限られた人にしか会えなかったけれど、今度は今回会えなかった人にも会いたいと思う。
フランスでの生活は2年目に入った。新しい経験と人生の変化がしょっちゅう起こっている。ヨーロッパへの適応と日本とのつながり、どちらも捨てずに生き抜いていきたいと思う。

フランスに帰る便で使った耳栓